「やべ、クーラーのリモコンがねぇ。」

「は?」


そんな会話をしたのが、つい数分前の話。久しぶりの練習が早く終わる日でどこか行こうかーとなりはしたものの、二人共毎日の練習で疲れてるし、夏真っ盛りで暑いし、家で二人でのんびりしようかと言う事になった……ところまでは、よかった。
アイスやジュースをコンビニで買い込み、高尾の家に来てさぁクーラーを入れてのんびりしようかとしたところで冒頭に至る。


「な、なんで!?」

「いやー、今更思い出したんだけどそういやリモコン朝真ちゃんに貸しちゃったわ。」

「なんでクーラーのリモコン貸すの!?」

「いやー、ラッキーアイテムなのに家のリモコンは母さんに持って行くのを止められてしまった……なんて落ち込むから。」

「さっき家まで送ってきたんだから回収しなさいよばか…!」


忘れちゃってた、てへぺろ!なんて平然と言う、しかも似合っている高尾に軽く殺意が芽生えた。リモコンを貸すところまではいい、緑間がラッキーアイテムがないと大変な事になるのは知ってるから。
でも家につけば本人のリモコンがあるだろうになんで回収忘れたし…!


「まーまー、とりあえずほらジュースでも飲んで落ち着こうぜ。」

「誰のせいよ、もう。」


せっかく買ってきたジュースがぬるくなるのも嫌なので紙パックのジュースにストローをさした。高尾もぷしゅって音をさせて、炭酸の缶を開ける。
仕方なしにとりあえずお疲れ様って事でジュースを軽く合わせて乾杯をする。


「もー、そんなに怒んなってー。」

「わっ、ちょっ!」

「あ、」


高尾の馬鹿が急に抱き着いてきたせいで体勢を崩しそうになって、机に手をついてなんとか支えようとしたものの、手をついた位置が悪かったのか高尾のジュースがひっくり返ってしまった。
ひっくり返ったジュースが左手にばっしゃりとかかって気持ち悪い。炭酸って、べたべたするんだよね。


「もー、暑いんだから早くどいてよ。」

「…俺、まだジュース一口も飲んでない。」

「知らないよもう!高尾が急に抱き着いてきたからでしょ!」

「まだ味わえると思うんだけどなー。」


そう言った高尾がにやりと口端をあげた瞬間、ぞわりと背中が泡立った気がした。ものすごい、身の危険を感じる。
その予感は的中して、ジュースのかかった私の左手を高尾の手がすくうように掴んだ。


「ちょ、な、ひゃっ、」

「んー、ちゃんとまだ甘いじゃん。」

「も、はやくやめてよ!ひっ、」


高尾はちろちろと赤い舌を私に見えるように動かして、ジュースのかかった手首から指先をゆっくりと舐めていく。焦らすように舐めていきながら、時々私の顔を伺うように見上げるその動きと瞳がとても煽情的で、益々身体が熱くなっていく。

ただでさえ暑いのに、何を考えているんだと思うのに、手を支えている手とは逆の手の平にしっかりと身体を固定されていてうまく抵抗出来ない。


「指、おいしーじゃん。」

「そんなわけないでしょ、も、ばか。」


私の左手の指を一本残さず綺麗に舐めてしまった高尾が顔をゆっくりとあげる。炭酸とはまた別のべたべたとした感触が指を覆っているけれどちっとも嫌じゃなくて。
近付いて来た高尾の瞳がまるで獲物を見つけた獣のようで。あまりの暑さで脳まで溶けてしまったのか、流されてしまってもいいかな、なんて―

―――思った瞬間。


私の携帯がうるさく鳴り響いて、ハッと正気に返る。着信画面に表示される緑間真太郎の文字を見て慌てて高尾を押しのけて電話に出た。高尾にリモコンを返したいのだが高尾が電話に出ない、確か今日は高尾と一緒ではなかったかとの問い掛けに答えて、今からそちらに取りに行くと言う旨を伝えて、高尾を蹴り飛ばした。


「緑間んちにリモコン取りに行くよ、ばか尾!」

「ええええ!てゆーかばか尾って何だよもー!」


ぎゃーぎゃーと喚く高尾の手を無理矢理ひいて外に連れ出して自転車を出させる。緑間からの、電話がなかったら危なかっただろう。うう……暑さってこわい。


「リモコンとって帰ってきたら、覚悟してろよ?」


なんて、そんな一言、絶対に聞こえてない。



尊さなんぞはそこらの下水道で溺れてます

20120907



えろ、てぃっく……?ひええ、だめですどうも恥ずかしくてまったくえろてぃっくさが…ううすみません…!あきさんリクエストありがとうございました!
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