「これは…しばらくしたらやみそうですね。」

「そうだね、部室で止むのを待とう。いいね?」


赤司くんのその言葉にみんなが了承の意を示す。降りつづける雨粒が部室の屋根に落ちてぼたぼたと大きな音を鳴らしている。どうやら最近多い夕立らしく、雨が止むまでみんなで部室で待つ事にした。
部室に残っているのはいつも寄り道するメンバー、よくキセキと称される部員6人に同じくキセキと称されるマネージャーの桃ちゃん、プラス私。


「ねーねー、むっくん。」

「なーにー?」


外から聞こえる雨音をヒントに面白い事を思いついて隣のむっくん――いや、となりのむっくんに声をかけた。
相変わらず美味しいのかまずいのかよく分からなそうな味のお菓子をもさもさと貪る姿は何とも可愛らしい。


「むっくんはさ、ト○ロより身長高いんでしょ?」

「うん、そーみたいだねー。」

「じゃあさ、むっくんが今ぴょんて跳んだらさ、雨粒ぼたぼたって落ちてくるかな?」


思い浮かぶのは、某有名アニメ映画のこれまた有名なシーン。ト○ロが跳んだ瞬間ぼたぼたぼたっと雨粒が降って来るシーンだ。ト○ロ以上の身長のむっくんが跳んだら、部室の屋根に乗った雨粒が落ちたりするんじゃないか、なんて子供のような期待をしながらそう言えば、部室が一気にシーンとなった。


「え、私なんか変な事言った?」

「…そんな事あるわけないのだよ。」

「…落ち着け、あれはアニメだ。」

「もー!可愛い事言っちゃって!!」


口火を切って否定してきたのは緑間で、それに続いて説得するように青峰が肩に手を置いてきたと思えば、青峰を押し出して桃ちゃんが抱き着いてきた。むっくんはちゃっかり少し離れたところに移動してお菓子を貪っている。


「いや、でももしかしたらあるかもしれないっスよ!」

「!黄瀬くん!」


みんなが否定してくる中、黄瀬くんが言ってくれた言葉が嬉しかった。みんながないないと言う目を向けてくる中黄瀬くんと二人でむっくんに期待の目を向ける。
最初は嫌がっていたむっくんだけど、なんとか立ち上がらせる事に成功して、跳んでもらえる事になった。


「もー、行くよー。」

「むっくん、全力だよ!」


有り得ないと言っていた緑間や、青峰から冷たい視線を向けてくる黒子くんに高見の見物赤司くん、隣で見守る桃ちゃん黄瀬くんと言った面子が見守る中、むっくんが軽く飛ぶ。
コートの中で飛ぶ姿とは違って、狭い部室でむっくんみたいな大きい人が跳ぶと結構な迫力だなぁ、なんて思いながら見ていた。


―――ぼたぼたぼたっ


「なった!!!?鳴ったっス!!!!!」

「鳴ったね!」

「鳴ったー!」

「ぐぐぐ、偶然に決まっているのだよ!」

「何焦ってるんですか緑間くん。君賢い設定なんだから落ち着いてください。」

「紫原…お前まさか―!」

「まさかじゃないです、落ち着いてください赤司くん。」


部室が騒然とする中むっくんだけが落ち着いて、お菓子をぱりぱりと貪り続けている。今のはむっくんが跳んだからだと主張する私たちと、違うに決まってると主張するみんなでキセキ分裂が起こりかけた頃黙っていたむっくんが口を開いた。


「じゃーさ、とりあえずほら抱き着けるか試してみていーよ。」

「え?」

「ほら、飛ぶシーンみたいに。ほらおいでー。」

「むっくん…!」


何故かうっかり感動した私は盛大にむっくんに抱き着いてしまい、その意味不明さに部室のみんなのテンションが一気に下がったのは言うまでもない。



新世紀に期待大って馬鹿野郎

20120906



これ、ギャグ…ですかね?ギャグがないような気しか、うう、すみません…。あみさんリクエストありがとうございました!
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