中学生と言うものは噂好きな生き物で、こと恋愛事に関しては特に。私も一度だけ噂の中心人物になった事があったのだけれど、この噂の相手がものすごく恐れ多い人物で、私なんかが噂になってはまずいのではないかと言うような人物だった。


「あ、また表紙。」


大学に行く前に寄ったコンビニの雑誌コーナーには、私が数年前噂になった相手が雑誌の表紙で笑顔を見せていた。相変わらず、本当にかっこいいなぁ。何度かバスケの試合を見に行ったものの、顔を近くで見る事はなかった―――彼、黄瀬涼太こそが私が中学時代噂になった人物で、初恋の、人だ。

なんとか君はなんとかちゃんが好きらしいよ、ほんとに?ホントホント!なんてそんな噂に混じって聞いた噂は彼が私を好きというもの。私は彼を好きだったけど、それはないな、なんて冷静に思った。
だって彼は、いつだって女の子に囲まれているような完璧な容姿と性格の持ち主だったから。見ているだけでいいと、そう思っている内に3年間は過ぎていた。
完全片想いのくせに未練たらたらで高校時代は何度か彼の出てる試合を見に行ったっけ…。

そんな私も立派に大学生になったわけだしそろそろいい加減新しい恋をしないと、なんて思いながらレジで会計を済ませて、大学に向かう。

無理でもせめて気持ちだけでも伝えておけばよかったかも、次会える事があったら気持ちだけでも伝えておこうかな、なんて。会える事もないだろうけどと思いながら構内を歩いていれば、後ろから肩をつかまれた。


「わ、」

「突然スミマセン!あの、もしかして…もしかして…!」

「え、黄瀬くん?」


たった今考えていた初恋の人物のまさかの登場に思考がフリーズする。まさか、そんなどうして、なんて否定と疑問の単語しか出てこないのはそれほど驚いているからだろうか。
次、もし会えたら気持ちだけでも伝えようかなんて思った瞬間なんて、神様は少し、意地が悪すぎるんじゃないだろうか。


「えっと、久しぶりだね。」

「あの、俺ずっと声かけたくて会いたくて…」

「ちょ、落ち着いて黄瀬くん。」


息を乱しながら単語を紡ぐ黄瀬くんの背中を撫でる。これ、都合のいい幻覚か夢じゃないんだろうか、なんて思ってしまうのも仕方ないと思う。


「俺、中学の時ずっと君が好きだったんスよ!」

「え、私もです。」


思わずサラッと返してしまったけどこれって告白になるんだろうかとか、黄瀬くんまだその口調そのままなんだとか色んな事が頭を巡るけど、黄瀬くんが顔を赤くするからそんな事全部忘れてしまいそうだ。


「うわ、じゃあ中学の時言っとけばよかったっス…。」

「あは、私もそう思うよ。」

「あの、でも実は俺は、今も…だったり…」

「え、」


他のものがすべて遮断された気がした。今もって、どういう事なの。それってその私の都合のいいように解釈してもいいんだろうか。やっぱりこれ、私に都合のいい夢か幻覚なんじゃないかと思うけど、黄瀬くんにつかまれた腕が熱くて、幻覚でも夢でもないんだと気付く。


「その、えっと、私もだったり…」


そう言った瞬間顔が熱くなってきて、黄瀬くんの顔も真っ赤であまりの恥ずかしさに俯けば黄瀬くんに腕をひかれて抱きしめられる。
こんなに幸せで、いいんだろうか。

こういうのなんていうんだろう、3年越しの初恋、みたいな?


「やべ、俺もう絶対、離さねぇよ。」


なんて黄瀬くんが耳の近くで言うから、すべてどうでもよくなって、とりあえず今は黄瀬くんを抱きしめ返す事にした。



ペチカは迷わず花束を抱きしめる

20120905



なんだか色んな要素がごちゃまぜすぎて意味が分からなく…ぐぬぬ…すみません…。でも書いててすごく楽しかったです…!ようちゃんリクエストありがとうございました!
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