私と同じクラスの花宮真くんは、とても綺麗な顔をしている。日本人形のように美しい黒髪から覗く理知的な瞳は、これまた人形のように真丸で綺麗。その他のパーツもすべて、鼻も唇も、すべて、すべてが憎らしいほどに美しく整っている。

そんな花宮くんに初めて出会った頃から私は恋心と言う物を抱いている。私みたいな普通の人間が、彼のような選ばれて、愛された人間に恋をするなんて恐れ多いのだけれど。
あぁまた、クラスメイトに向かって慈愛の溢れた天使のように笑っている。

じっと見つめていれば私の視線に気付いたのか、その視線が鬱陶しかったのか彼がこちらを振り返る。瞳が合った瞬間彼は今までの慈愛に溢れた笑顔が嘘だったかのように歪んだ笑みを浮かべる。
声を出さずに動いた唇は遠くから私に言葉を伝える。

瞬間にぞわぞわと何かがはい上がって来るかのような感覚に陥って立ち上がる。保健室に行こう、何だか異様に気分が悪い。

廊下に出て保健室への道を歩いていれば、後ろから肩を捕まれた。本当はこうなる事は分かっていたし、もしかしたら本当は…


「期待、してたんだろ。」


その声が響いて、慌てて肩に置かれた手を振り払う。彼にしてみれば私のような凡人の思考を読む事など造作もない事なのかもしれないけど、私にはひどい、衝撃だ。期待していた、なんて気付かれてはいけない。


「そんなわけ、ないでしょ。」

「嘘ついてますって本当は気づいて欲しいんですって目、だな。」

「なっ!」


顔を赤くして目をそらせば、花宮くんにはもう言葉に出したも同然のように気持ちはバレバレなんだろう。悔しい、恥ずかしい。そう思うのにその場から逃げ出す事なんて出来ない、だって私は花宮くんが好きだから、ずっと前から好きで、彼に話し掛けられる事を、触れられる事をひどく喜ばしく思っている。その事もきっと花宮くんにはすべてバレバレなんだろうね。

みんなに見せる慈愛に満ちた嘘の笑顔より、歪んだその笑顔が、みんなにかける嘘の優しい言葉より、意地悪いその言葉を私が望んでいる事もバレバレなんだろうね。


「お前ほんと変わってるな。」

「それは、花宮くんも同じでしょ。」

「は、知ってるよバァカ。」


私を罵倒して、みんなに優しい言葉を吐くその唇が私の唇をふさぐ。

すべてが花宮くんにバレバレで、花宮くんの事は分からない私だけど、私もひとつだけ知ってるよ、花宮くん。花宮くんは私の事を暇つぶしとしか見ていない。それでもあなたが私に触れる時はとても優しいからそれでいい。

あなたが私の事が好きじゃなくても。



エデンすら

20120904



切…甘…?切ない要素も甘い要素も中途半端というかむしろない気が…!うああすみません…!初めて書きましたが花宮大好きなのでリクエスト頂けて嬉しかったです。創菜さん、リクエストありがとうございました!
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