何から始まったんだかはよく覚えていない。確か今月涼太が載っていた雑誌を見ていた時私が涼太以外のモデルさんはピアス開けてるんだね、と言ったのがきっかけだったかな。…あれ元凶私?
まぁでも涼太以外のモデルさんはみんな高校生より上の人ばかりだったし、ピアスをあけずともサラサラの金髪だけで充分輝いていてオシャレだったから別にピアスしてなくてもいいよねーと思ってたんだけど、私のその言葉を聞いた青峰が涼太をからかいはじめて。

…うん。からかったのは青峰だからやっぱり悪くない。

それにのせられた涼太が「じゃあ青峰っちの誕生日までには開けてやるっス!」なんて言ってしまって青峰も「やれるモンならやってみろよ。」なんて笑ったのが一週間ほど前の事。

その次の日の涼太はいつもと変わらなくて、青峰も自分の言った事なんかすっかり忘れてて、やっぱり冗談かー、まぁ仮にもモデルだし事務所に黙ってピアスなんて勝手に開けたら問題だよね、と思って、私もそのまた次の日には忘れてたんだけど、今やってしまいやがったと思うと同時にその事を思い出していた。


「ちゃんと頑張って開けたんス!」


そう言う涼太の左耳には買ったばかりだろう銀色のピアスが輝いている。絶対、事務所に許可はとっていないだろうな…。
なんで左耳だけなんだとか、まだ覚えていたのかなんて色々な事が頭を巡るけど驚きすぎて口からは声が出なくてパクパクと動くだけだ。


「びっくりしたっスか?」

「びっくり…した……ちゃんと事務所に許可とったの?」

「…あっ!」


忘れてたっスと言いながら涼太はにこにこと笑う。背後から後光のように差して来る太陽が涼太の金色の髪の毛とピアスをきらきらと輝かせた。
涼太があまりにも嬉しそうに笑うものだから色んな気力がなくなってきた。


「てゆーか…なんで左耳だけなの?」

「あっ!」


忘れてたっス!なんて言うものだからてっきり片耳開けるの忘れてたなんて言い出すのかと思えば、涼太は嬉しそうに笑うからそうではないと気付く。…片耳だけで痛くて嫌になっちゃったんじゃなかったのか。


「左耳だけのピアスはね女のコを守る強い男の象徴らしいんス!」


だから俺も先輩の事守るっスからね!なんて涼太は笑う。その意味が分かった瞬間頬が一気に熱くなりだす。その笑顔は可愛くて、でも、かっこよくて。ああもうなんだか嫌になってしまう。どうしてこんなに涼太はかっこいいのか、と頭を抱えれば涼太はのんきにどうしたんスか?なんて言う。


「頑張ったからあとでご褒美くださいっス!」

「仕方ないなあ。」


私ばかり顔を赤くして、ドキドキさせられているのが悔しくて涼太のブレザーの衿をぐいとひく。絶対涼太はまた青峰に笑われるんだろうなあなんて思いながら陶器のような頬にキスをひとつ落とせば、涼太によって隠れていた太陽が近づいて、金色の髪はさらにきらきらと輝く。

私以上に真っ赤な顔になった涼太の左耳には強いオトコノコの証のピアスがきらきらと存在を示していた。



ちゅーしちゃおっと

20120830
黄瀬涼太が度胸一発ピアスを開けた日!
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