あぁもう、なんだかすごく、イライラする。

同じクラスの黄瀬涼太は、容姿端麗、スポーツ万能、勉強はちょっと微妙だけど…そんなところも可愛らしく思えてしまうほどに他が完璧な人間で。
特にその容姿はサラッと人気雑誌の看板モデルになってしまうほどに、完璧なもので。あまりの人気に最近はバラエティ番組なんかにもゲストに呼ばれるほど…。

当然年頃の女の子がそんな男の子を放っておくはずがなく、彼は毎日色々な女の子に囲まれている。

別に…好きなんかじゃない。第一私は絶対あの男に嫌われている。性格も明るくて、優しくて最高!だなんてみんなは言うけど私は全然そうは思わない。
どんな女の子にも優しくして、笑顔を向けて、無駄な期待を持たせて…結局そんなはずはないと絶望するだけなのに、私と、同じように。

女の子の集団に囲まれた彼を見ていれば、目が合ってしまった。あの瞳と目が合うのは好きじゃない―――惹かれてしまうから。
彼が微笑んでひらひらと手を振った瞬間、反射的に目を逸らす。彼の周りの女の子が騒ぎ出す声が聞こえた。今笑ってくれたのも、手を振ってきたのも嫌がらせなんだ、私が嫌いだから私を喜ばせて嘲笑うつもりなんだ。だから期待なんてしてはいけない、嫌われている、嫌われているんだから。






また、顔を背けられてしまった。彼女の笑顔が見たくていつだって特別な笑顔で手を振っているつもりなのに、一度も笑ってくれる事も手を振ってくれる事もない。
悲しいんだかイライラしているのか分からなくて周りの女の子達に謝りをいれて別れを言って、彼女の元へ向かう。

無視されてしまうかもしれないなんて不安に思っていたのに俺が声をかけると彼女は怯えたような目で俺を見つめてきたものだから驚いてしまった。
…それとも、怯えられてしまうほどに、嫌われているんだろうか。


「…俺の事嫌いなんスか?」

「は、嫌いなのは…そっちでしょ…?」

「…へ?そんなわけないじゃないっスか…?」

「いや、そんな嘘のフォローいらないから。嫌いならほっておいて…。」


そう言った彼女の瞳は泣きそうなのに、強くて、彼女がそんな瞳をする意味が分からなくて。でもそんな瞳がどこか可愛いな、とぼんやりと思いながら口を開いていた。


「俺が嫌いなわけないじゃないスか…嫌いなのはそっちっしょ?」

「は、そんなわけないでしょ?」


クラス中の注目を集めはじめているのは分かっていた。でも今更俺も、多分彼女もひくにひけなくて、言い争いのようなものはヒートアップしていく。だって、嫌いなんかじゃないのに。


「俺は…俺はちゃんとこんなにも好きなのになんでっスか!」

「意味わかんないよ!好きなのは私の方なのに!…あっ、」

「…え?」

「え?」


「「…え?」」


やっと気付いたかとでも言うようにクラスのどこかからいくつかのため息が聞こえた。二人で顔を赤くするまで、あと3秒。



ハートピンクは小瓶に詰まってる

20120902



まとめる能力がなさすぎて…!くっつくまで行く為に無理矢理詰め込んだ感ありありで申し訳ないです…。にゃもさん、リクエストありがとうございました!
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