今年も誠凜高校バスケ部の夏は忙しい。去年も創部してすぐ大会の手続きがあってすぐ大会に入って、夏が来て大会で合宿で…と忙しかったけどまだ1年目という事もありリコも手探りだったし少しはスケジュールに余裕あって。

でも今年は、だな。

WCに向けてみんな必死だったりまさかの合宿が二本立てだったり合宿がなくても練習は毎日あったりで、夏休みなんて名ばかり。
むしろ授業がないから毎日練習尽くしの動きっぱなしで学校がある時よりキツイレベルな気がする。


「というわけで数少ない休みにしっかり夏をエンジョイするぞー!」

「おー…!」


今日は数少ない休日。本当なら身体を休めるべきところなんだけど1日くらいみんなで夏らしい事をしよう!って事でみんなで海にやって来た。先日合宿で海に来たものの練習尽くしで折角海に来たというのに何も、出来なかったのが心残りだったからね。


「リコたん水着可愛いねー」

「そう?…ってちょっとあんまくっつかないでよ。」


リコの水着姿の可愛さにべたべたとくっつけばリコに押し返され、火神には真っ赤な顔で「や、やめろ!です!」と言われた。
アメリカ帰りの帰国子女がどうして水着姿の女子二人がくっついただけでこんなに顔を真っ赤にしているんだ、可愛いな。


「火神は可愛いなー!」

「ちょ、やめろ!ですよ!」


不器用な敬語が更に可愛さを煽って、つい頭をわしゃわしゃと撫で回す。身長が高い火神の頭は撫でにくいのが難点だけど可愛いから撫でたくなってしまう。
日向達が呆れ返る中、火神の頭を撫で回し続けていれば後ろから黒子に声をかけられた。


「そろそろやめてあげて下さい。」


そう言った後に黒子はサラリとあと、水着お似合いですね。なんて言った。更に後ろから降旗くんや、河原くん福田くんといった可愛い1年生達や癒しの水戸部と土田くんがハラハラとした目で見てくるからおとなしくやめた。


「お前ら海入んぞー!」


そんな日向の掛け声で小金井が跳び上がって、それを合図にみんなが海に向かって走り出す。そのみんなの後ろ姿がやけに眩しくて目を細める。忙しいし休みはないし、それでもやっぱりこいつらとバスケに尽くす夏が1番楽しくて宝物なんだ。


「おっと、」


私も海に入ろうと思って走り出そうとした瞬間、くらりと目の前が歪む。あ、ヤバイとそう思った瞬間には身体が後ろに傾いていて、まあ砂浜は柔らかいから大丈夫かなーなんてのんきに思っていたのに、感じた感触は砂浜ではなくてピタリと肌が触れ合う感覚で。

振り向けば太陽を瀬に伊月がため息をついていて。ありがとーと言ったのに伊月は返事を返してくれる事なくリコの持ってきたパラソルの下へと私の腕をひいた。

肩を押されて座らされたと思えば伊月はポスンと隣に座った。いつもならこのタイミングで、駄洒落なんか言っちゃうのに真面目な表情のまま。黙ってれば男前な上に水着の相乗効果で胸がドキリと高鳴る。


「伊月、どーしたの?珍しく駄洒落言わないね。」

「…どうせ昨日遅くまで起きてたんだろ?ほら肩かしてやるから寝なさい。」


図星をつかれてびくりと肩が跳ねた。その私の反応を見てやっぱりな、とそう言った伊月は私の頭を引き寄せた。

こつんともたれかかった肩から直に伝わって来る体温がリアルで少し恥ずかしい。でも、ちらりと目線をあげれば伊月が微笑んでくれているその状況がとても幸せで、少しだけこのままでいたいと私は目を閉じた。

少しだけ遠くからはみんなの笑い声が聞こえて来る。伊月が呼吸する度に上下する肩が心地いい。


ああなんだか本当に、幸せ、だなあ。



オレンジソーダの中でおやすみ

20120825



やっぱりオールは難しいですねー…ちゃんとみんなに喋らせられなくてごめんなさい。みんなでわちゃわちゃしてるのは書いていて楽しかったです。ナタコさんリクエストありがとうございました!
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