寂しいなあ、ちょっとだけ、だけど。


私の彼氏の高尾和成くんは、バスケ部の1年レギュラーだったりする。ちなみにうちの学校のバスケ部は東京都三大王者なんて呼ばれるくらい強いらしい。

それでバスケ部の練習が忙しくてなかなかデート出来ないとか、一緒に帰るにもかなり遅くなるとか、それだけならまだいい。いや、よくないけど、いい。矛盾してるけどこれが本音だ。

全く光る気配のない携帯を見て思わず溜息。


…緑間くんには、沢山メールしてるみたいなのに。

何度もセンターにメールを問い合わせしてみるけど、新着メールはありませんなんて虚しい文字の羅列が並ぶのみで。
きっかけは今日のお昼休みに、緑間くんから聞いた話だ。高尾が無駄なメールやしょうもないメールばかりしてきて困っているという相談みたいな話で。
私は高尾くんからそんなメールをもらった事なんてなくて…むしろ、メールをもらう事自体少なかったりして。

元から常にと言っていいほど高尾くんと一緒にいる緑間くんはちょっと羨ましかったり、嫉妬、なんてしてたりするのに。そんな話を聞いてしまえばもう爆発してしまいそうだったけれど、それを必死で堪えた。

そして今日はお付き合いをはじめてから初めて、高尾くんに何も伝える事なく一人で先に帰ってきた。心配のメールとか来るかな、なんて少しだけ、少しだけだけど期待してたのに、携帯が光る気配なんてまったくなくて泣きたくなってしまう。

溜息を吐いて、一人だけで勝手に泣きそうになって。机に突っ伏して携帯電話を握り締めた。


――おーい、もしもし?


あまりの寂しさについに幻聴まで聞こえるようになったらしい。高尾くんの声が聞こえる気がするんだけど、いっそ幻聴でもいいかなんて、そう思ってしまうほど…


「高尾くんが、すきなのに…」

「…ちょ、うえええ!!あ?!」


大きな声に驚いて、慌てて顔をあげる。まさか、そんな。突っ伏した瞬間高尾くんから電話が来て、衝撃で適当に押したボタンが通話ボタンだったらしい。携帯画面には高尾くんの文字。つまり、という事はまさか。


「今の…聞いてた?」

「…しっかりな。」


恥ずかしくて顔が赤く染まる。無意識のうちにだしてしまった好きの言葉を本人に聞かれていたなんて恥ずかしすぎる。


「真ちゃんから聞いたんだけど、俺がメールしないの、好きじゃないからじゃないから!」

「え?」

「メールで変な事言って、嫌われるのいやなだけだし…っあーもう!」


なんだかとても、恥ずかしくて嬉しい事を言われた気がする。嫌われるのが嫌って事は、好きでいてもらえてる、って思ってもいいですか?


「あー上手く言えないから今から行く!」

「え!?もう夜だよ?」

「俺が行きたいから行くんだよ!…俺が会いたいの、分かる?」


ああもう、顔が熱い。会いたいなんて、言われたら胸がいっぱいになってしまうじゃないか。高尾くんって、なんでこんなに私をドキドキさせるんだろう。
気付けば私は「待ってる。」なんて言ってしまっていて。


「…待ってろよ、オヒメサマ。」


ほんと、私をドキドキさせる天才だ。



16beatでいに行く

20120822



これ、切甘…ですかね…?あああ素敵な高尾のリクエストでしたのに生かしきれず…でもとても楽しく書かせて頂きました…!咲無さまリクエストありがとうございました!
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