夏休みだー!高校生になって初めての夏休みだもん、海行ってプール行ってお祭り行って出来れば夏って季節任せに素敵な彼氏を…………なんて、考えていたのに、ですね。
実際の夏休みはバスケ部のマネージメント一色で、インターハイが終わったと思えばいつの間にか夏休みも終わりが近くて、遊びに行けてないのはもちろん、部活に必死だった私は当然宿題なんてこれっぽっちも手をつけていないわけでして…、ですね、だからして、


宿題見てもらえませんか、氷室先輩?」

「…最後の一言だけでよかったんじゃない?」

「そこは御愛敬という事で!」


そう言えば氷室先輩は小さな溜息を吐きながらも少しだけ笑ってくれて、その仕種がなんとも色っぽいなんて、思ってしまうのは私だけが悪いわけじゃないはず。

ひとつ年上のバスケ部の先輩の氷室先輩は、顔立ちは整っているし、高身長だし、帰国子女(つまり英語ペラペラ!イケメン!)だし、更に性格は温厚というどこかの乙女ゲームの攻略キャラ並に完璧な人物なのだ。

そんな彼に恋する女の子は当然沢山いて、私もその一人だ。バスケ部マネージャーという職も今ばっかりは役得として使わせて頂こう!ひとつ上のセクシーな先輩方に勝つにはこれぐらいしなければ、なのだ。……まぁ、実際宿題が終わってないだけなのもあるんだけど。


「氷室先輩ー、全然わかんないです…もう数学やです…。」

「大丈夫、大丈夫、落ち着いて。この辺りが分かれば他も簡単になるから。」


そう言って、私の頭を撫でる手の平は大きくて、少し骨張っていて、そんな男の人な氷室先輩に私はドキドキしてしまうのに。氷室先輩は私の事なんて妹程度にしか思ってないんだろうなあ…。


「好き、なのになあ。」

「え?」


思わず気持ちをぼそりと呟いてしまって、慌てて両手を振って、なんでもないです!と否定をする。臆病者の私には氷室先輩に告白なんてハードルが高すぎる。


「じゃあほら、ちゃんと集中して。」

「う、ごめんなさい…」

「ちゃんと終わったら、今日の夜あるらしい花火大会連れていってあげるから。」

「え!え!ほほほんとですか!!」


思いもよらない言葉に問題集から顔をあげれば、笑顔で頷いてくれる氷室先輩。だから早く終わらせようね、なんて言われてしまってなんだかコントロールされているだけのような気も否めないけど、とりあえずはそんな事はどうでもいい。
氷室先輩と花火大会…!多分紫原くんも来るんだろうけどそれでも構わない。思いもよらない夏休みの最高の思い出に、期待が膨らんで問題を解く手も軽くなる。


「あ、」

「どうかしましたか?」

「花火大会、もちろん二人で行こうね?」


にっこりと笑顔を浮かべる氷室先輩がいっそ憎らしい。頭の中はショート寸前。問題解けなくなったら、氷室先輩のせいだ。

でも、氷室先輩と花火大会行きたいから、頑張り、ます。



こっちてビーム


20120821



氷室先輩初めて書きました…偽物感が否めません…!素敵なシチュエーションのリクエストでしたのに申し訳ありません…!
りつさん、リクエスト頂きありがとうございました*
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