夏の体育館での部活は、地獄だ。特に今年は鳩対策だかなんだかで窓を閉め切らなきゃいけないルールがあるらしく、体育館での部活代表、男子バスケ部には死亡フラグが立ちまくりである。ちなみに黒子くんは既に3回倒れた。洒落にならん。


「と、言うわけで、アイスを買ってきてあげましたよーっと!」


両手に持ったドライアイスたっぷりのスーパーの袋を持ち上げて、体育館入口で叫べば、汗だらっだらで走り回っていたバスケ部員たちの動きがぴたっと止まった。すごい、一時停止みたいになってる。


「マジか…ですか!」

「マジだよー。あともう敬語頑張らなくていいよ火神くんや。」

「うわーい、アイス!水戸部〜アイスだってー!」

「(こくこく)」


最初に動き出して食いついてきたのは目をキラキラとさせた火神と小金井で、その後ろから保護者の黒子と水戸部、更に後ろからその他とリコが来ていた。


「まだ休憩なんて言ってないわよ!…でもまあせっかく買ってきてくれたし水飲み場の日陰あたりでみんなで食べようか!」


ツンデレか。最初の一言の瞬間火神と小金井は絶対絶望してたよリコさんや。リコの一言で、水飲み場でアイスを食べる事が決定して水飲み場に向かってわらわらと歩き出す。隙あらばアイスを強奪しようとする火神と小金井に挟まれて水飲み場までアイスを保護するのが大変でした。


「さてさて一人ひとつですよ野郎どもー!取って来なー。」

「ゴリゴリくんか!俺はハーゲンダッツとかが食べたかったな!」

「ダァホ、こいつにそんな経済力ねぇよ。」

「うん、木吉と日向はちょっとこっち来いや。」


ナチュラルに失礼な発言をする二人を咎めれば私よりも先に、リコが二人の頭をスパーンといい音をたててはたいてくれた。さすがリコたん男前。


「流石リコ大好き!あ、リコもアイス食べてね。」

「ありがと、もらうわ。」


笑顔を浮かべて、御礼を言ってくれるリコは天使だ。こんな野郎どもに囲まれていて心配で仕方ないよおねーさんはまったく。
蝉がみんみんと鳴いている、太陽の光が降り注いで、光でいっぱいの世界。いつの間にか夏真っ盛りなんだなあとぼんやり。


「はい、」

「ひゃっ、うわもう…ありがと。」


早くもあつさにへたれて日陰にしゃがんだ私のおでこにひんやりとしたアイスがぴとっとくっついてきて、その冷たさに思わず声をあげた。
私の分のアイスを差し出しながら伊月は少しだけ笑っていた。私がアイスを受け取ると隣に座ってしゃくしゃくとアイスを食べだしたから私もアイスを取り出して一口かじった。


「はっ!アイスを食べながら、あっと見つけたイスに座る…キタコレ!」

「寒いわ。」


駄洒落を一刀両断すれば、伊月は面白いのに…と不満そうに漏らす。今の季節は涼しくなってちょうどいいわと冗談っぽく笑えばしょうがないなとでも言うように笑った。


「確かにちょうどいいかもしれませんね。」

「わ、黒子。いつの間に来たし。」


驚いてアイスを虫歯のところで噛んでしまった。普通にしみた。
さっきです、と言いながら黒子は伊月とは逆の方の私の隣に座った。しゃくしゃくとアイスを食べる姿がなんともかわいらしくて頭を撫で回したくなった。


「アイス、ありがとうございます。」


顔をあげて笑う黒子の表情は穏やかだ。きっと今、バスケが楽しくて仕方ないんだろうなあ。楽しそうで何よりと笑えば黒子くんはまたありがとうございますと言って笑った。

少しだけ離れた水飲み場ではドライアイスを水に流した煙で興奮した小金井や火神たちが騒いでいる。嬉しそうに笑う木吉に、仕方ないなあとでも言うように笑う土田、おろおろとする水戸部、我知らぬとアイスをかじる日向に、やめなさいと怒りながらも笑ってるリコがいる。

そのみんなの姿があまりに幸せで、携帯を出して写真を撮れば隣のふたりも幸せそうに笑った。

蝉がみんみんと鳴いている、太陽の光が降り注ぐ、光でいっぱいの世界にみんなが笑っている。



知らないがたくさんあるのも素敵じゃない

20120804


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遅くなってしまいましたが一応一万打御礼のつもりです。一万打ありがとうございます!とても幸せです。
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