・なんか暗い
・なんかよく分からない
最初に抱いたのは、毎日毎日大変だなぁという他人事のような同情心とじんわりとした親近感。まともに話した事もない、恵まれた容姿に、運動能力に…。天に二物も三物も与えられた彼と天に何も与えられず日々努力と挫折を繰り返す私との何処に共通点があって私はどこに親近感を感じているっていうんだろう。馬鹿、じゃないの。
たくさんの女の子達に囲まれて中心で笑顔を浮かべる。光を一身に浴びたかのような金色の髪はキラキラと輝いて、更に明るく明るく彼を照らしていた。
まだー?と大きな声をあげる 友人 に笑顔を向けて教室から出た。
◇
最近ゴリゴリくんにハマった。家に帰る前にコンビニの隣の公園でシャリシャリと音をたてて食べながら、一人でブランコを揺らすこの時間が唯一の、安息。
仲間外れにされないように、いない間に悪口を言われないように、毎日毎日ファミレスにゲーセンにカラオケに、本当に友達なのかと聞かれれば分からないような人達なのに。
一人が怖くて、あのグループから離れた後の自分を想像すると怖くて、毎日無理をして一緒に出かける。
財布の中にはもうほとんどお金がない。ダイエット中なのって言い訳もあとどれくらい通用するだろう。無理して無理して無理を重ねて、いつまでこのままで頑張れるんだろう。
帰ってもどうせ、また寄り道してって怒られる。お母さんごめん、でもコドモの世界も大変なんだよ。
ぽたりとひざに落ちた雫は、溶けたアイスか私の涙か。
「隣、いいっスか?」
「もっと可愛い女の子に声かけた方がいいですよ。」
突然声をかけてきた知らない男の声にそう返せば相手は「君がいいっス。」と言って私の返事を聞く前に隣のブランコに座った。君がいい、なんてほとんど顔も見えないこの状態で、公園のブランコでゴリゴリくん食べてるような女に何を言っているんだと思ったけど、それきり相手は何も言わないから、黙った。
「なんか、親近感感じたんスよ。」
「は?」
ゴリゴリくんも半分以上食べ進めた頃、隣の人がまた口を開いて不思議な事を言った。また何を言い出すんだこの人はなんて思いながら数時間前の自分も同じような事を思っていたような気がして。
そういえばどこかで聞いた事があるような声だと思って、ちらりと見えた海常のスラックスにすべてがつながって、思わず食べるのをやめた。
「そんなわけない。私と違ってもっともっと色々な物持ってて幸せでしょう?」
ひゅっと彼の息の音が聞こえる。驚いて思わず隣を見れば、彼も私の方を見ていた。ゆるい月の光が彼の後ろから差していた。ずっと彼は太陽だと思っていた。みんなに見てもらえて愛してもらえるいつも光の真ん中にいるそんな存在だと。
「同じ、っスよ。」
「寂しい、よ。」
手を伸ばしたらゆっくりと彼が、黄瀬くんが頷いた。シンプルな指輪がいくつかはめられたその指先と触れ合った瞬間、なぜだか涙が出た。とてもとても温かかった。
黄瀬くんも、泣いていた。
なんだ、同じだ。
「寂しいっス。」
黄瀬くんはゆっくりとブランコからおりて、私の手の平を引いた。少しだけ残っていたゴリゴリくんを落としてしまったけれど特に気にならなかった。どうでも、よかった。本当はどうでもよかった。
「痛い、ね。」
「痛い、っス。」
お互いの傷を、孤独を、舐めあうかのように温もりを求めた。他じゃだめ。ぴったりと合っていた。同じ、だったのだ。
黄瀬くんと私の涙がゆっくりと溶け合って、落ちていった。
お月様が泣いたり静寂が笑ったり、そんな夜にしようよ
20120726
…なんかすごくよく分からない話になってしまった。申し訳ありません…。