明るくて、クラスの中心的存在で、男子バスケ部期待のエース。バスケをしている時が1番楽しそうでバスケバカって言葉が似合いすぎるくらいバスケが大好きで、
それが同じクラスの青峰大輝という男だった。
―――だった。
青峰の笑顔が消えたのはいつだったろう。いつも笑っていて、ふざけてたまに先生に怒られて、でも先生にもなんだかんだ人気で。そんな青峰から笑顔が消えたのは、凍結されてしまったかのように冷たい瞳で、笑わなくなってしまったのは、いつだったろう。
私はバスケの事は授業でやった程度しか分からないし、バスケ部内部の事はもっと分からない。
それでも、放課後になれば毎日、バスケ部の練習に直行していた青峰が、練習にも行かずに帰ってしまう姿が増えた分、バスケ部で、バスケで何かがあったと推測するのなんてとても簡単な事だった。
青峰がそんな状態になってはじめて私は自分が青峰の事を好きになっていたんだと気付いた。すべてが今更、だった。
「青峰。」
「おまえ、遅い。」
そんな言い方ないでしょと言いながら、購買のテリヤキバーガーを投げれば青峰は綺麗にキャッチして起き上がった。なぜ購買でマジバ並みのクオリティーのテリヤキバーガーが売られているのかは永遠の謎だと思う。
「うめ、サンキュ。」
もしゃもしゃとすごいスピードでテリヤキバーガーを咀嚼しながら、大きな手の平でぐしゃぐしゃと私の頭を撫で回す。やさしくない、少し乱暴な青峰のこの頭の撫で方が私は大好きだ。
青峰を追いかけるようにこの桐皇学園を受験して、入学した。桃井さんがいるから私なんて必要ないと分かってはいたけど、好きだから大好きになってしまったから、どうしても放っておけなかった。
青峰は変わってしまった、でも青峰は変わらない。口元についたソースを指先で拭いながらぼんやりとする青峰の横顔は全然変わらなくて、でも全然違う。
「変な顔してんじゃねーよ。」
「わっ、」
頬をつままれて、口角が上がる。きっと今私は泣き笑いみたいな顔をしているんだろう。好きなのに、好きなのに私はこの人の役にまったくたてない。
放っておけなかったなんて嘘、本当は私が離れられなかった、離れたくなかっただけ。
うっさいばか、と言えば青峰はなぜか泣きそうな顔で笑う。栄光も名誉もいらないから、ずっと青峰の傍にいたい。
私よりずっと大きな身体を抱きしめれば青峰は小さな、驚くほど優しい声で「おまえは、バカだな。」と言った。
ね、私達は、何をなくしてしまったんだろう。
グロリアスワールドの消滅
20120724