中学三年間、同じクラスの人というのは大体5、6人ほどいるものだ。なぜかその5、6人はあまり仲がよくない人が多いんだろう。永遠の謎だと思う。私にも三年間同じクラスの子達はもちろんいた。
その中のひとりが亜豆美保で、彼女はとても可愛くて、賢い、私の好きな人の好きな人だった。


「真城ぉー進路希望のプリント出して。」

「え、なんでお前集めてんの?」


委員長が休みだから押し付けられた、と言えば、お前ほんと運悪いな、と真城は笑う。真城が鞄から取り出した少しだけ端が折れたプリントの1番上の欄には谷草北、と少しだけ癖のある男の子らしい文字で書かれていた。


「げ、真城第一希望谷草北なの?」

「げ、ってなんだよ。もしかしてお前も谷草北?」

「ううん。私は第二が谷草北。」


なんだ、第二か。と言って真城は座っていた椅子を揺らした。背中にちくりとした視線を感じる。……お願いだから見ないで欲しい。あなたと目が合った瞬間こっそりと照れる真城なんて見たくない。
私の入る隙なんてまったくないんだって強く実感させられるから。あなたみたいな綺麗な人に敵うはずないなんて痛いくらい分かっているから、これ以上、痛ませないで。


「そのプリント今から持って行くのか?」

「うん、職員室にね。」

「手伝ってやるよ。」


そう言ってがたりと立ち上がった真城にどきりと胸が高鳴る。やっぱり、男子なんだよね。めちゃくちゃ高いってわけじゃないけどやっぱりそれなりに高い身長で見られるとドキドキする。


「でも、そんな多くないし。」

「バカ、お前こないだそれでプリントばらまいただろ。」


そう言ってすっと私の手から半分以上のプリントをさらっていく。別にめちゃくちゃかっこいいわけじゃないはずだし、スポーツ万能なわけでもめちゃくちゃ頭がいいわけでもない、のに。こういうところでずるいから、私は真城への好きを止められない。

彼女の友達が彼女の名前を呼ぶ声が聞こえた。帰るんだろうか。その声に反応して真城もちらりと振り返る。私には入れないぴったり合ったふたりの視線。


「…真城ー、行くよ。」

「あ、ちょっと待てよ!」


嫌な女、みたいね。ごめん、ごめんなさい。でも許して、今、少しだけ。私が真城と両想いになれる事なんて絶対にないから少しだけ許して。


「ころぶなよ。」


階段前に立てばそう言って少しだけ笑う。ただの中学生の恋。いつか忘れてしまう幼い恋。そう言えばそれだけだろうけど今の私には、今この恋が全てなんだ。

好きですと、口の中で出せない言葉を転がした。



すきを切ってがしてくっつけた

20120719
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