寒さが本格的に厳しくなってきた日の午後、選択科目で同じだった緑間くんがぽつりと呟いた。
−−もうすぐでアイツの誕生日なのだよ。
 当然わたしにはアイツとは誰の事だかわからないわけで、頭上にはてなマークを浮かべていると、緑間くんは「高尾なのだよ、高尾。」と付け加えた。どうやら高尾君の誕生日が近いらしい。
 おは朝信者だけあって、緑間くんには誕生日に対するこだわりでもあるのだろうか…いや、そんな、あり得る。
 へえ、高尾くんの誕生日か。なんて思いながらふんふん言っていると、緑間くんはわたしの目をじっと見つめ、「バスケ部でアイツの誕生日を祝うことになっているのだが、よかったらお前も来るか?」と言った。もちろん宮地先輩も来るのだよ、と言うのも忘れずにいるところがこわい。わたし、宮地先輩が好きってこと高尾くんにしか知られてないはずなのに…。
 しかし、これは、宮地先輩を抜きにしても、高尾くんには一応お世話になっているし、行きたいなあというのが本音である。少々気に食わないところもあるが、基本的にはいい人…だと思う。
 緑間くんの申し出に「よろこんで。」と答えると、緑間くんはきれいに笑った。
「お前が来てくれたら高尾も喜ぶのだよ。」
「そう?だと嬉しいなあ。」
「俺も、楽しみにしているのだよ。」
「ありがとう、緑間くんは優しいね。」
 緑間くんのフォローはたまに空気が読めない場合もあるけれど、気持ちとしては大変嬉しいものである。「だ、誰にでも言っているわけではないのだよ…!」「うん、そうだねえ。」「俺は真面目に言っているのだよ。」「うん、うん。」なんだか面白くなってきたが、高尾くんの誕生日パーティーをするというのなら、善は急げ、だ。プレゼント選びである。
 幸いにして先ほどの選択授業が本日最後の授業だったので、わたしは帰宅部もびっくりのスピードで教室から出た。
 …あ、掃除忘れた。



「…なににしよう。」
 バスケ用品にしようと思い意気込んできたものの、そういうのは自分で選んだものの方が使いやすいだろうし、なにより、わたしが何を選んだらいいのかわからない。…すっごいアウェー感…。
 気を取り直して再考してみる。女の子同士だったら適当にかわいいものやおしゃれなものを選べばなんとかなる、と思っている。だがしかし、今回は高尾くんだ。もう一度言う、高尾くんだ。
 ふらふらとお店を回って、あれはだめ、これもだめ、と悩み歩いていると、ふと1つの真っ赤なカチューシャが目に入った。
 これだ。



 誕生日パーティーはサプライズで行われた。高尾くんは、宮地先輩が「朝練早めにすっから6時に学校な。」と伝えたらしい。
 そして、わたしたちはもちろんそれより前に到着する。こんなに早く学校に来たのは始めてだが、悪くないかなと思った。楽しみがあるからかな。
「うぃっす。…ってアレ?俺一番乗…うわっ!?」
 パーン!
 クラッカーの音にお出迎えされた高尾くんは、まだ眠いのか瞬きを何回もして現状を把握しようと必死だ。
 緑間くんが呆れたように「今日は何の日か忘れたのか?」と聞くと、本当に忘れていたらしい。しばらく考えた後に「ああ!」と声をあげた。
「でも、放課後でもよかったんじゃ…?」
「バーカ。俺らが一番じゃなきゃなんか腹立つだろうが。じゃ、みんなでせーので言うぞ。」
「せーの…!」
『誕生日おめでとう、高尾!』
 生まれてくれて、ありがとう。
 なぜか一番先にプレゼントを渡すことになったわたしは、その言葉とともにプレゼントを差し出した。

 涼しい顔をして、その割には笑っちゃうほど負けず嫌いな、真っ赤な君。
 そんな君に出会えたこと、心から感謝をしたいと思うよ。

Happy Birthday!
Kazunari Takao!

ぎりぎりになってしまいすみませんんんんん(/_;)
ほんとうに、高尾が生まれてきてくれてうれしいです藤巻先生に感謝します。
そして、このような企画をつくってくださってありがとうございました!公開楽しみです(*^。^*)




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -