な//なみださえも愛しいなんて
目を閉じてみると、あの日の感動が、歓声が、鮮明に蘇って来る気がする。なんて、俺らしくないかな。
夢みたいだった、想像すらも難しかった、全国大会優勝の夢。秀徳に入学してからいつの間にかそれはどんどん鮮明になって行って、あと少しで手が届きそうで、でも、届かなくて。
緑間以外のキセキ達、加えて火神や氷室さん、どいつもこいつも努力家で必死で、こいつらに勝てる日が来るんだろうかなんて言いようのない壁に道を阻まれそうになった日もあったけど。
毎日練習を積み重ねて、それこそ、休みなく毎日バスケばっか。もちろん辛いなって思うこともあった、真ちゃんだって他の仲間達だってそうだと思う。なまえなんかもっと辛かっただろう。
それでも迷わず俺についてきてくれたのはきっと、緑間だから、あいつらだから、なまえだったから。
◇
ずっとそばにいてと言った時、彼女は泣いた。
俺が告白した時、彼女は泣いた。
俺が愛してるとはじめて言った時、彼女は泣いた。
俺が、結婚して欲しいと言った時も彼女は泣いた。
最初は正直、俺も不安だったし、早まりすぎたかな、俺となんて嫌だったかな、と思った事もあったけれど、少しずつ悲しい涙じゃないと分かるようになった。
俺は幼なじみだから、なまえの事は俺が1番分かってるつもりだったけど、全然分かってなかったのかもしれないと思ったけど、でもそんな場所も知って行けるようになった事が嬉しかった。
「なに、にやにやしてんのよー。」
「へへ、だーってなまえ嬉しくて泣いてくれてんだなーと思ったら嬉しくて。」
和成には、なんでもお見通しなんだ。と恥ずかしそうに俯く彼女も可愛くて、愛しいと思う。幼なじみのままじゃきっとこんな表情も見る事が出来なかったんだろう。
ああ、好きだ、な。
ついと拭った彼女の涙はとても暖かかった。
◇
ブザービートが鳴り響いて、秀徳の優勝が決まった瞬間、ぼろぼろと涙を流しながら走ってきてくれたなまえを抱きしめた。
3年間何も言わずに支えてきてくれた、大切なひと。ずっと傍にいて欲しいと願う、たった一人のひと。
俺の為に流してくれた、大切な涙。笑顔だけじゃなくて、この涙もずっと守っていこうと、歓声の中で誓った。