近くにあった薬局で適当な消毒液やガーゼを選んで、迷ったけどストッキングも適当に選ばせてもらった。驚いて戸惑う彼女の手をひいて、青峰っちとよく行く個室居酒屋に向かった。赤司っちの知り合いが経営しているとかで赤司っちのお墨付きのこの居酒屋で、邪魔が入った事は一度もない。

いつもの個室に入ってから、彼女の向かいに座って笑って見せた。






突然目の前に現れた彼に手をひかれて、わけが分からずにあの、そのなんてまともな言葉にならない疑問符を口にすれば、彼は振り向いて大丈夫だから着いてきて下さいっス!なんて爽やかに笑う。
大丈夫な保障なんてどこにもないのにその笑顔を見れば手を振り払う事なんて出来なくて、もうどうにでもなってしまえというさっきまでの気持ちに任せる事にした。

私なら入れないだろう上品な居酒屋に迷いなく入った彼は、案内された個室の畳に私をそっと座らせてから向かいに座った。まるでお姫様のような扱いをされてついどきりとしてしまう。


「突然ひっぱってごめんっス。」

「いいえ、あの。」

「びっくりしたよね、あ、なんか飲む?」

「や、えっと。」

「好きなの頼んでいいよ。俺はウーロンにしようかな。」

「あ、じゃあ私もウーロンで、お願いしても…。」


にっこり微笑んで頷いた彼は、きっと人によく気を使える人なんだろうなと思う。ウーロンを先に頼んでくれたのもきっと私が頼みやすいようにしてくれたんだろう。
天は人に何物も与えるんだなあと、思わざるを得ないくらい、このたった数分で分かるくらい彼は完璧だった。

すぐに運ばれてきたウーロン茶を口に運べば、一気に身体が潤ったような、そんな気がして気持ちが落ち着いた。


「落ち着いた?」

「あ、はい…。」

「傷口、消毒するっスね。」


消毒なら自分でしますという言葉や、消毒液のお金を払うという言葉を彼はさらりとかわして、私の膝を労るように、包むように、優しく消毒していく姿をみているとすごく恥ずかしくて目をそらせば小さく笑われた。


「これでオッケーっス。ストッキングはき変えてくる?」

「…本当に、すみません。」

「大丈夫だよ、ほらはき変えておいで。」


優しくそう言われて、少し泣きそうになってしまった。手渡されたストッキングを握り締めて、店員さんに声をかけて、お手洗いに向かった。

何が起こってるのかなんて分からないけど、とりあえずはき変えた後、彼にちゃんと御礼を言おうと思った。


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