また、落ちた。


最終審査に進んだ女の子達可愛かったなあ。自分の名が呼ばれ、嬉しそうに立ち上がりながら、目を輝かせて笑う女の子達の姿がリピート再生のように脳内で繰り返される。

その隣でまた、悔しさと絶望を味わう自分も。

向いてないのかなあ、目の前を通り過ぎて行く雑踏を見つめながら思う。緩く巻かれた茶色い髪の毛に、ぱっちりとしたつけまつげ、大好きな人と腕を組んで通り過ぎて行く同年代だろう女の子。
羨ましくないって言えば嘘になるし、でも、私には夢があるからいいんだって、強がってた。

でも流石にこれだけ落ちると、なんかもう嫌になってきてしまった。目の前の携帯画面には正社員にならないか、と書かれたバイト先の店長からのメールが表示されている。今のバイト先嫌いじゃないしもういっそ、普通に就職して、普通におしゃれしたり彼氏をつくったりしてみようか。

きっとその方が、幸せかも、しれない。

夜のライトに照らされた、大きな看板の中で笑う綺麗な女の子たち。私もいつか、なんて信じていた。考えてみれば、すぐに分かる事なのに…私とあの子達には、天と地程の差がある。

今流行っているアーティストのPVが流れていた大きな画面の映像が変わって、人気上昇中のタレントが映し出される。今度俺の新曲が発売する事になったっス!なんて言いながら浮かべる笑顔は幸せそうに輝いていた。
太陽のように輝く金色の髪に、整った顔立ちにスタイル。私だって、私だってあんな風に生まれていれば。努力じゃ越えられない壁がある、そんな事とっくの昔から知っていたけれど、それをまた、まざまざと見せつけられた気がして俯いた。

さっき転んだ時に擦りむいた膝からはまだ血が流れている。少し休めば痛みもおさまるだろう、と、待ち合わせによく使われる植木の端に座ったものの、痛みはまったくおさまる気配がない。
今日の為にとせっかく奮発して買ったパンプスもその時にひどく汚れてしまった。立ち上がるだけでもぴりぴりと痛む、こんな膝じゃ電車にだって乗れやしない。

情けなくて、悔しくて泣きたくないのに涙があふれてくる。ようやく掴みかけたチャンスだったのに、また掴みそこねてしまった。

幸い植木の陰になっているおかげで誰にも気付かれそうもない、涙も止まりそうにないし、少しだけ泣かせてもらおうと俯いた時だった。知らない声が降ってきたのは。


「……大丈夫っスか?」


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