物心ついた時から、本を読む事が生活の一部だった。お母さんは大変な読書家で、幼い頃から私に絵本の読み聞かせ、私を連れて図書館に通った。
そのおかげか、そのせいなのか分からないけれど、私は周りの子よりひとつ難しい小説を読んでいた気がする。

私が小学生になった頃、沢山読んだ小説の中でも大好きだった小説の映画化が決まった。映画やドラマと言った映像はあまり見なかったけれど、そこはやはり大好きな小説と言う事で映画館まで観に行った。


ひどい、衝撃だった。


頭をガツンと殴られたかのような衝撃、涙がしつこいくらいに零れてきて、まぶたを濡らした。幼い頭に思い描かれた未来は、スクリーンに映る自分の姿だった。

これに、出たい。そんな簡単かつ、単純な子供の夢。小さい子がアイドルになりたい、ケーキ屋さんになりたいと言うようにいつか消えて、懐かしい、そんな事もあったねと笑うような、「夢」。
その夢を何故か忘れられないまま、諦められないまま大人になってしまった。自分の立場を弁えもしないで。


―――「だから私は、失敗作なんです。」


そう言って、眉を下げて悲しそうに彼女は笑った。おかしいでしょう、こんな単純な思考で夢を抱き続けるなんて馬鹿みたいでしょうと笑った。
頼りなさげな、折れてしまいそうな笑顔がいつか、大丈夫だと笑いながら泣いていた彼女の顔がぼんやり浮かんだ。

あぁ、やっぱり似ている。


「そんな事、ないっスよ。」

「いいんです、気にしないで。」

「頑張って、追いかけて来たんスよね。他の楽しい事全部捨てて、頑張って来たんスよね。ね、

泣いても、いいんスよ?」


そう言ってあの頃、馬鹿で、幼くて、できなかった優しい笑顔で笑って頭を撫でてあげたら彼女の右目から透明な雫がぽろりと落ちた。しつこい程に頭を撫で続ければ後から後から雫が零れて行く。
透明な雫は、マスカラとアイラインが滲んで黒が混じって、また透明になった。その雫が、いじらしくて俺はまた、優しく笑えて。


「ごめんなさい、」

「いいんスよ、今まで我慢したもの全部泣いていい、ね。」


あの頃彼女に言いたくて、でも言えなかった言葉があっさりと零れて、今目の前にいる小さな女の子を優しく包みこんであげる事が出来た。



――――――――――
理由がなかなか思いつきませんでしたひい…


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