そして物語はまた巡る


「きゃー!なまえちゃんキレー!」

「ありがと、さつきちゃん。」


いつも可愛くて綺麗なさつきちゃんに綺麗だなんて誉められたら、お世辞と分かっていても嬉しくて照れてしまう。今日は、本当に特別な日だからいつもより、少しだけでも綺麗だったらいいんだけど…。


「…本当によかったね。」

「さつきちゃん…ありがとう。」


優しい笑顔で、言葉を紡いでくれるさつきちゃんに笑顔で御礼を返す。さつきちゃんを含め、色々な人のおかげでここまで道を違える事なく、歩いてくる事が出来た。

私の今の幸せは、私と「  」二人だけで築いたものではなく、沢山の人に支えられてあるものなんだ。


「あ、」

「ん、どうしたの?」


私の後ろを見て、少しだけ驚いた顔をするさつきちゃんを見て私も後ろを振り向く。そこには、ひょこりと扉から顔を覗かせた…相変わらずかっこいい涼太がいた。
黒いスーツに金髪なんて似合う人がこの人以外にいるんだろうかなんて思うくらいしっかりと着こなされたスーツ…流石現役モデルだなあと思う。副業ではじめた歌手業も順調らしいし…


「…私、会場行ってるね!」

「あ、さつきちゃ…行っちゃった。」


すごいスピードで出て行ったさつきちゃんは去り際に涼太の肩を叩いていって。入口でそわそわとする涼太に声をかければ、涼太は少し躊躇いながら部屋に入ってきた。


「…幸せそうっスね。」

「…うん。」

「それに、綺麗っス。」


ありがとう、の言葉を紡げば自然に笑顔が溢れて、涼太も私が昔大好きだった、どこか彼に似た、太陽のような笑顔で笑ってくれた。


「俺ね、今ちょっとだけ気になってる子がいるんスよ。」

「わ、ほんとに?どんな子?」


高1の夏から涼太の浮ついた話を聞く事はなくて、そんな涼太の口から気になってる子がいるなんて聞いて、素直に嬉しかったし、驚いたし…少しだけ寂しかった。


「…バカな子なんスよ。要領悪くて、泣きたいくせに泣かないし、無駄に必死だし、諦め悪いし…だれかさんにそっくり。」

「涼太、」

「あ、でもだれかさんに似てるから気になってるとかじゃないんで余計な事考えちゃダメっスよ?」

「ちょっと、ウインクとかキメ顔しないでよ。」

「最後に、ちょっとだけ後悔させてやろうかなって?」

「しないよ、バーカ。」


その言葉に涼太が笑って、私も笑った。いつか、友達だった頃のように大きな声で笑った、それがとても幸せだった。


「涼太も、早く幸せになりなよ。」

「当たり前っス!なまえが悔しくなるくらい幸せになるから、」


見てろよ!なんて笑顔で言った涼太はあまりにも輝いていて、眩しいほどで。目を細めて笑う。私は彼を、思い出にする事ができたみたいだ。

それが出来たのは、今とても幸せなのは、きっと――――――


「ちょっとー、結婚式当日に花嫁誘拐とかそんなドラマみたいな事いんねーよ?」

「俺俳優なんで、やってもいいっスか?」


いいわけねーだろバカ!なんて言いながら涼太の足に蹴りを入れるのは、大切な人。今まで大切だった、これからもずっとずっと大切な人。


「和成、タキシードかっこいいね。」

「だろ?なまえも…「あーもう!俺が出て行ってからやって下さいっス!」


「「あ」」なんて二人でハモってしまって、涼太は熱いっスよもー!なんて怒りながら出口に歩いていく。


「黄瀬!ありがとなー!」


そう叫んだ和成に向かってか、私に向かってか、涼太はひらりと手を振った。かっこ、つけちゃって。
変わらない後ろ姿に、最後のさよならを言う。幼かった私、幼かった彼。そんな沢山の色々なものに、サヨナラを。


「さて、なまえさん。」

「なんでしょう、和成さん。」

「…すげー、綺麗。」

「…ありがとう。」


さつきちゃんや、涼太にも綺麗と言ってもらえたけどやっぱり、和成に言われるのは全然違って。嬉しくて、笑いを堪え切れずだらしない表情になってしまう。


「な、ほんとに…俺でいいんだよな?」

「和成こそ、私でいいの?」

「俺は、なまえがいーの!なまえじゃなきゃやだし!」

「ふは、私もそうだよ。和成じゃなきゃダメだよ。」


そう言った瞬間和成は私を強く抱きしめて、幸せすぎてやばいかも、なんて言うから私もそうだよと答える。きっと私は今、ううん、和成に出会った時からずっと、世界一幸せな女の子だ。


「やっべ、我慢できないかも。」

「は?」

「誓いのちゅー、今してもい?」

「もう…仕方ないなあ。」


そう言えば和成は幸せそうに笑う。その笑顔が嬉しくて、愛しくて、私もゆっくり目を閉じる。唇に優しい感触、そうして和成は私の耳元で「愛してる」を囁いた。


ずっと、愛してるを未来に繋げていくと、誓います。



サヨナベイビー
そして物語はまた巡る


20120821



長らくお付き合いありがとうございました!サヨナラベイビーはこれにて完結です。クロスオーバー連載では黄瀬くんを幸せにするつもりです。このお話の高尾とヒロインちゃんも少し出せたらいいなぁ…と思っています。
閲覧してくださった方、応援メッセージを下さった方、支えてくれた友人に、いっぱいのありがとうを。本当にありがとうございました!




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