これからも、ずっと


走って、走って、彼の元へ向かう。もう迷わない。大好きと、ありがとうと、ごめんなさいを、伝えに行こう。






高尾に電話が繋がらず、緑間に電話をかけた。数回のコール音のあと緑間が電話に出て、私が一言も言わない内に話しだした。――信じて、待っていたのだよ。と。

高尾は勝手にフラれた気になって体育館で一人で自主練を続けているから早く行ってやってやれと言われた。冷たい口調の中に感じる温かさ、本当は友達思いの緑間。もし、高尾がまだ私の事を好きでいてくれたら二人でありがとうを伝えに行こう。

緑間の言う通り、体育館からはボールの音が響いていて、高尾が一人、シュート練を繰り返していた。その姿を見ただけで胸が苦しくなる。ああ、大好きな人。私が「今」大好きで大切にしたい人だ。


「…高尾!」


自分で思っていたより声が震えて、体育館に響いて。高尾が驚いた顔をしてボールを取り落として、私を振り向く。そんな表情さえ、大好きだと思えて。

自分から好きだと伝えるのは初めての経験で、既に心臓がうるさく喚きはじめていた。


「…なまえちゃんどーしたの!もしかして幸せになりましたーみたいな報告?」


それはちょっとキツイかも、なーんて。と茶化すように私に言う高尾。いつだってこうして、私や、周りの事を考えて、自分の心を隠して優しくいてくれた。そんな高尾を今度は私が支えてあげられるようになりたい。


「私ね、前…束縛がキツイってフラれたんだよね。」

「…どしたの急に?」

「ちょっとだけ…聞いて。」

「…分かった。」

「ありがとう。私…もしかしたらまた勝手に不安になって高尾の事束縛しちゃうかもしれない…でも頑張るから、もっと大人になって高尾の事支えられるようになるから…私と、付き合ってくれませんか?」

「へ?」

「…高尾が好きです。」


私がそう言った瞬間、音もなく高尾の瞳から大粒の涙がぼろぼろと流れ出す。うわ、なんだこれ。格好悪い。と目を擦る高尾を、気付いたら抱きしめていた。


「え、え、黄瀬…は?」

「私が今、好きなのは、傍にいたいのは高尾だよ。」


そう小さく告げれば、背中に強く腕が回って。高尾の汗の香りいっぱいに包まれる。それが、愛しくて、愛しくて。これが幸せなんだと感じて、幸せなのに胸が締め付けられて苦しくていっぱいで。


「俺の方がなまえの事好きだし…傍にいてほしーし…」

「そんな事言われたら…束縛しちゃうよ?」


そう冗談っぽく告げれば、高尾は私から体を離して、涙を拭って、笑顔を浮かべる。今までもずっと優しかった瞳が更に優しくて、胸がまた苦しくなった。


「なまえの束縛とか、大歓迎。」


そう言って笑って高尾はまた、私を抱きしめた。見えないのに、高尾もきっと私と同じ表情で笑ってるんだろうなって分かる。


今、大好きな人。これからもずっと好きでいたい人。

だから、この手を離さないでいられるように二人で一緒に大人になっていこう。もう間違わない。ずっと一緒にいられるように、この気持ちを忘れないで、ずっと。


これからも、ずっと、二人で未来へ。




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