俺の勝手で自己満足


負けてしまった、なまえが試合見に来てる日だっつーのに情けねぇなあ。こんなんじゃ黄瀬のとこ行かれても仕方ないかなーって思って、髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱した。

試合前に、なまえどこ座ってんだろうなーって客席を見回してすぐになまえを見つけた。さっすが俺なんて馬鹿な事を思った直後になまえの隣に黄瀬が座っている事に気付いた。あんな綺麗な金髪のやつなかなかいねぇし、海常の制服だし間違いなく黄瀬。正直ちょっと焦った。

勝って、早くなまえ迎えに行ってやらなきゃと気合いを入れた。真ちゃんがいるし、強い先輩達だっている。負けるわけねーって、思ってた。


けど、


試合には負けちゃって、信じらんなくて。先輩達はもちろん真ちゃんまでもが悔しそうな複雑な表情をしてて、もちろん、俺も悔しくて。
真ちゃんの背を押して、バレないように観客席を見遣ればさっきまで座っていたはずの場所になまえも、黄瀬もいなくて。
慌ててあたりを見渡せば、出口の方へ黄瀬に手をひかれて行くなまえがいた。

真ちゃんから、なまえと黄瀬が付き合ってた事はなんとなく聞いてた。なまえが傷つけられた事も知ってて、だから黄瀬にいらついて、俺の方がなまえの事幸せにできるって思って、その時に自分がなまえの事好きなんだって気付いた。


「かっこわりぃ、なあ。」


なまえがまだ、黄瀬の事を好きな事くらい分かってた。俺の方を見てほしくて、好きになって欲しくて頑張ってたつもりだった。でもそんな事全部、俺の勝手で自己満足で、黄瀬となまえの邪魔してただけなんかもしんねぇ。


「何をしているのだよ。」

「うわ、真ちゃん!?外行ってたんじゃなかったの?」

「…なまえはどうした?」


俺の疑問に答えずに疑問で返してくる真ちゃん。今更そんな事は気にしないけどなまえの事を聞かれた事に少しだけ動揺した。なんでもないような笑顔でからかい気味に返事を返す。


「なーにー?真ちゃんったらなまえちゃんの事心配?」

「からかうな……早く迎えに行ってやれ。」

「え、」

「きっと泣いているのだよ、お前を待っているはずだ。」


あまりに真ちゃんらしくない一言に驚きを隠せなかった。泣いている、はずがない。もしかしたら黄瀬とヨリ戻してるかもしんない、のに。
真ちゃんの目があまりにも真剣で、なんだかなまえが本当に泣いている気がして、なまえの悲しそうな顔が浮かんで。

気付けば真ちゃんに御礼を告げて走り出していた。




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