当たり前のような毎日は、過ぎて行く度に飽きて来る。

だけどそれがどれだけ大切だったかなんてのは、きっと、最後が訪れてからだろう。



まだ眠っている剣心に「ごめん、ありがとう」と書き置きを残して部屋を出た。
すれ違う毎日は、やっぱり恋人としては寂しかった。でもそれは初めの半年だけで。




「はあ、今日も冷えるな…」




息を吐けば白くなった。
また冬がやってきたけど、やっぱりカップルは寒いと言いながら表情は暖かい笑顔を浮かべながら寄り添っている。
羨ましい反面、あんな時もあったなんて懐かしむ自分もいた。




「name、」




ふわっと背中が暖かくなった。




「………剣心」




家で眠っていたはずの剣心が、いた。
いつもの剣心の香りと、いつもの剣心の温かさが背中から伝わる。




「出逢って、今日で一年でござるな」




覚えてるなんて思わなかった。
毎月記念日には私だけはしゃいでいて、いつも剣心は苦笑いだったのに。




「………なんで、……っ、ばか…」




涙が、止まらなかった。

もうさよならしようって、絶対にもう、戻らないって、




「………空いた溝は埋めればいい。もう、拙者とnameの間は溝はないでござろう?」




体を向かい合わせると、剣心は優しく私にキスをした。
あったかくて、優しくて、いつもの、剣心の唇は。




「………やっぱり、剣心じゃないと、」



「駄目でござろう?」




意地悪に弧を描いた。









別れなんて、ない


お題は、コランダムさまからお借りしました。


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