目の前にいる彼はいつも笑ってる。
これは良いことなんだろうか。
でもまあ人当たりが良いから………うん。
そうやって言い聞かせないと、ほら。
またあたし、嫌なおんなになっちゃう。



「あっ、あの!………よ、良かったら連絡して!」


「あ、はい。わかりました!」



分かりました、ってこの野郎。
あたしがいながら…!
ああ、いけない。
大人にならなきゃ、そうよ。大人になるのよ、name。



「nameさーん!」



こっち来た。
相変わらず可愛いなあ、宗ちゃんは………あの笑顔が憎いよ、もう。



「あ、うん。おはよー。」



マズい、普通に出来ない。
あの子に連絡するのかな。可愛かったな、あの子。宗ちゃんのこと好きなのかな……。



「どうしたんです?恐い顔して」


「わ!……び、びっくりした!」


「え?僕ずっと呼んでましたよ?」



うわお。
そんなにあたしって嫉妬深いの?
考え過ぎ。だけど、でも、だって!



「………ね、宗ちゃん。」


「なんですか?」


「「あの子に連絡するの?」」


「…え?」



な、なん…!
こいつはエスパー◯藤か!チガウカ!



「え、違いますか?」



へらへら笑ってらっしゃいますね、瀬田さま。
そんな可愛く笑ったって、あたしはなんだかやり切れませんよ。ははは。



「んー………」



何だか気持ちを全部知られてる?のかな。
言い辛いよね。
あの子に気があるの?連絡するの?とか………あーもうっ!



「ははは、nameさん。全部声に出てますよ?」


「は!まじで!」



ぱっ、と口を抑えようとした。



「〜〜〜っ!」



宗ちゃんに両手を掴まれて、そのままキスされた。
顔が熱くなる。
きっとあたし今すっごい変な顔してるかも……。



「僕はnameさんしか見えてないです。だから、nameさんも僕だけを見てて下さいね?」



にっこり笑った宗ちゃんの笑顔は、何だかあの子に向けた笑顔とは違う気がして。
胸がきゅうっと熱くなった。










私の取扱説明書


お題サイト「コランダム」さまからお借り致しました。

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