新撰組にいた時に、世話になった恩人が今では警察だと聞いた。

まさかあの斉藤一が…と耳を疑ったが巡回中の斉藤を見た時は笑ってしまうくらいに制服が似合っていた。


私が声をかける前に、斉藤は私に気付いた。

何を話し掛けると言うわけでも無く、
雰囲気で付いて来いとでも言われた気がして斉藤の後ろを追うと、突然立ち止まった。




「………何をしに来たんだ、阿呆」




この口の悪さは何時まで経っても変わらない、か。

それはそれで、懐かしくて。




「たまたま通り掛かっただけだ。………にしても斉藤が警官なんて、な。笑っちまったよ」




通り掛かった、なんて嘘だった。
会いに来た、が本当だった。




「今は藤田五郎だ」


「へぇ、藤田さん。これから私は人を殺そうと思ってるんですよ………警官の藤田さんは止めますか?」




脇差を見せ、笑った。

斉藤も笑っていた。
鼻で笑うような、呆れた笑みで私を見た。




「敵討ちなら法律で禁止されてる。殺るのは構わないが俺をこれ以上忙しくさせないでくれ」




斉藤は分かっていないのだろうか、私が斉藤を好いている事。



新撰組にいた時からだった。

始めて自分が女だと気付いたのも斉藤、私が始めて身体を許したのも斉藤、私が始めて斬られたのも斉藤。



ずっと、忘れられなかった。

なのに、斉藤は。










「………奥さんは、元気ですか?」




そう言って、血に濡れた脇差を抜いた。

斉藤の顔からは笑みは消えた。


そう、その顔が見たかったの。ずっと。










愛しすぎて




恋する故に、自分を貫いた。


貴方を苦しめたのは、貴方だったのに。
気付かなかったのは、貴方だったのに。