あぁ、そうやって微笑って。
不愉快なくらい、好き。




「name」


「…はい」




痛々しい程に巻かれた包帯、そこから見える怪しく笑って私を見詰める瞳。

その奥には何が隠されていて、何を思って、誰と私を重ねてるのか。
それは聞かないのが、暗黙の了解なんだけど。




「こっちに来い。離れ過ぎだろ?」




煙管を片手に、私を呼び寄せて、肩を抱いた。
そこから伝わる志々雄様の体温を熱いくらいに、感じて目を瞑った。




「…志々雄様、愛してます」


「あぁ、俺もだ」


「…」




何時もと変わらぬ、返事。

其れでも愛してしまう私に、志々雄様はきっと微笑ってる。




「由美さん、そろそろ帰って来ますね」


「あぁ」




由美さんが出掛ける短い時間。

それだけが、私と志々雄様の時間。




「…私、戻ります」




立ち上がろうとすれば、志々雄様は私の腕を掴んだ。
その拍子に私は志々雄様の腕の中に倒れ込む。




「どうか、されましたか…?」




何時もの志々雄様とは違う。
私を引き留めたりなんて、しなかったのに。

期待と、期待と、期待が。私の脳内を廻る。心臓は張り裂けそうなくらいに熱くて痛くて、でも心地良い。




「お前は俺の傍に居ろ…ずっと」


「…はい」








 これからは傍に




私だけを、愛して。




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