宗次郎の出逢いと言えば、去年のこんな寒い日だった。


来るはずの無い彼を、雪の中待つ私。

冷たくなった私の身体を宗次郎は優しく包んでくれた。




「…寒い」


「今日は雪が降ってますから、一段と冷え込みますね」


「雪嫌だなぁ…」


「僕は好きですよ、雪。」




自分の手のひらを合わせて摩ると、摩擦で多少温まる。


宗次郎は素手で少し積もった雪を掬った。
其の手は雪の冷たさで赤くなっていて。でも宗次郎は、そんな事は気にしてないと言った様子で雪を見詰めた。




「…宗次郎、風邪引いちゃうから早く帰ろう」




宗次郎の手の熱で溶けて来た雪だったものを私に見せて、
宗次郎は何処か悲しげに微笑った。




「雪って、nameさんと似てるんです。」




可笑しな事を宗次郎は言った。

へぇ、と素っ気なく返事をすると宗次郎は手のひらの水になった雪に視線を戻して。




「…僕たち、もうお別れですね」




そうやって微笑った宗次郎に、私の心臓は凍り付いた。


それは寒いからだったのか、なんなのか、
それは分からないけど。




「そうだね」




気付けば辺りは、白い雪で染まった。


それに足跡を残しながら、また私は歩き出した。










雪の降る頃




確かに、愛してた。

彼以上に、愛せなかっただけ。




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