宗次郎に部屋に呼ばれて、来たものの。





「…居ないじゃん」





部屋には宗次郎はいない。
入って良いのかも分からず、扉を開けたまま立ち尽くした。





「nameさん!遅れてすみません!」





ぱたぱたと小走りで廊下を駆けて来た宗次郎はなんだか犬みたいだった。
どうぞ、と部屋に通されると、ベッドに腰掛けた。





「で、どうしたの?」


「そうでした。…はい、これです」





宗次郎が私に差し出したのは、丸いきらきらしたもの。





「これ、…なに?」





首を傾げれば、宗次郎は笑って、それを自分の口に入れた。





「飴ですよ」





私が甘いものが好きなのを知ってて、宗次郎はひとつしかない飴を食べた。





「…ずるい!」


「あげましょうか、」


「うん!」





宗次郎は、にいっと笑った。





「…っ、」





甘くて、甘くて、熱いものが、口のなかを占領した。









甘味の誘惑


( 顔真っ赤ですよ? ) 


( …だ、って ) 


( 飴、返して下さい )


 ( え、無理だよ! )

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