「なあに、そんな膨れっ面して」





昼下がり。
朝からずっと機嫌が悪い剣心に意を決して聞いてみた。





「解らないでござるか?」





目を合わせ無いままそう言った剣心は、明らかに不機嫌である。
だが、いつも温和な剣心を怒らせる様な事をした覚えは無い。





「…私、何かした?」





そう聞けば、剣心はふうと溜息を一つ着いて、此方を見た。





「鈍感極まりないでござる」





ちゅ、と柔らかい音が耳に入ったら、目の前には剣心の顔。
状況を把握する事に一杯一杯だ。
何が怒ったか理解するには、時間が掛かった。





「わ、」





口付け、其れを理解した時にはもう自分の顔は熱くなった。
目の前にいる剣心は、優しい笑みで見詰めている事にも、耐えられない。





「…嫉妬、でござるよ」





吹っ切れた様に微笑った剣心に、問う。
何に嫉妬したのか?弥彦…左之助、其のふたり以外は思い当たら無い。



弥彦は有り得無いしても、左之助は…?





「左之助に、嫉妬したの?」





ぽかん、と云う表現が一番合うだろうか。
剣心を見れば、微笑った。
その笑みは、きっと。





「…他の男と目を合わせる事も、会話も、嫌でござるよ」










束縛さえも

.