「やだ、やめて…」


「name殿、」


「そうよ。堪忍して!」





今日はname殿の注射の日。
なんやら最近伝染病が流行っているとかで、
恵殿に注射をして貰うことになった。

だが、やはりと言うか何と言うか。
name殿はばたばたとして、全面拒否だ。
最初は強がって、大丈夫だとは言ったものの。
いざ、注射となればこの有様。





「剣心…助けて…」





うるうると瞳を濡らせ、ついつい代わってしまいたくもなるが。
それは意味が無くなってしまう。
厳しく、厳しくしよう、と自分に言い聞かせ、name殿を抱き締めた。





「拙者はname殿が伝染病に倒れるのは、嫌でござるよ」


「剣心…」





そう耳元で囁けば、name殿は意を決したのか…
拙者の袖口をきゅ、と掴んで片手を恵殿の前に出した。





「…ちゅ、注射…する…」





恵殿は、はあと一つ溜息を吐いた。
呆れるのも仕方ない。
朝からこうしていて、今はもう昼過ぎなのだから。





「…いくわよ」


「…う、ん…!」





ちくり、と針が刺さる瞬間。
name殿は拙者の袖口を掴む手が強くなる。
身体もぴくんと反応して、瞼はぎゅっと瞑って。





「大丈夫でござるよ、name殿」





優しく声を掛けると、ふるふると震えた。
それはもう可愛くて可愛くて、まるで猫のように。





「…はい、お終い」





恵殿のその言葉に、name殿は恐る恐る目を開けた。
その表情と言えば、嬉しそうで。





「な、なんだ!余裕、じゃん!」





にい、と笑うと、
拙者からは離れて行った。









はじめての。


( 恵殿、もうあと4、5本注射を… )


( 何言ってるんですか、次は剣さんですからね )


( おろ… )


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