企画用 | ナノ
三輪子猫丸×志摩柔造



「Hello Hello?」
 携帯から出てきた言葉はあまりに発音のいい外国語だった。慌てて電話を切ろうとすると、次いで笑い声がそこから聞こえてきた。その声のあまりに親しいこと、えっ、と短い驚きの声を上げて子猫丸は再度携帯に耳を押し当てる。
「柔造さん?」
「堪忍、まさか騙されるとは思わんで」
 それはたしかに自分が会話を望んでいた相手の声で、子猫丸は心底安心するが、すぐに顔を少ししかめる。騙さないでくださいよ、と拗ねた調子で言うと、また笑い声が子猫丸の鼓膜を震わせてきた。変わらない様子に、溜め息を吐き出して自分の椅子に腰を下ろす。
「ほら、今日クリスマスやろ?ほなら、外国流に迎えたろうと」
「それはええんですけど、発音があまりにようて驚きましたえ。柔造さん、英語お得意なん?」
「えー、むしろ苦手やなあ。というか、そんなに発音よかったか?」
「とっても。僕、驚いて、電話切りそうに」
「ハハハ、ほんまか。そら堪忍なあ!」
「……もう」
 さすがに廉造の兄か、柔造はひょうきんな性格だった。椅子の上で膝を抱き、子猫丸は肩をすくめる。それでも、携帯を握り締める力は強く感じられた。
「んで、今年もまた廉造と坊と過ごすん?」
 肯定の言葉は早い。ただ、脳裏に一点、奥村らの顔が浮かんだがあえて口にはしない。
「ほうか。俺もまあ、家族と過ごす感じや。廉造と坊のこと、よろしゅうな」
 一瞬、子猫丸の口が意思を持って開かれた。しかしそこから息すらも吐き出せぬまま閉口する。それから口内で何かもごつかせたあと、このタイミングで間を作ってしまうのも申し訳ないと思ったので、
「はい」
 短く答えた。携帯からは明るいおおきに、という礼の声が飛び出してきた。


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