偽者を神様は愛してくれない。 | ナノ




桂×坂本


お前が好きだ、と呟いた。呟かれた。しかし、答えは無い。代わりに、静かな静かな寝息が聞こえる。
坂本はガニ股だし言動が妙に馬鹿らしく荒々しいのだが、さすがに名家の子供、変なところで育ちの良さを具間見せる。大股開いて胸元をはだけさせて静かな寝息を立てて眠る名家の子供など、坂本以外誰がいるというだろうか。桂は布団から這い出て肌蹴ている坂本の胸元を正してやり、バレないようにそうと、その頬にキスをする。
(これはつり橋理論だ)
恋をしているわけではない、という理解に至るのは難易なことではない。寧ろそれに似た感情を抱いたその時から、擬似的な感情であると理解していた。理解していながらこうして口づけにまで至るのだから、自分の頭は相当イカれているのだろう。静かな寝息を立てるその唇を、微かに舐めて、口付ける。坂本は起きなかった。
少しだけ満足して、自分の布団に潜り込めば、秋の音がりいんりいんと聞こえてきた。昼間でのあの爆音が嘘であるかのような、そんな在り来たりな表現しかできない。それがいつまでも続けばいいと思っていたのは最初だけで、今はそんなことすら思う暇もない。毎日が戦争で、夜が更けすぎた頃に漸く就寝して、戦火の音が聞こえれば身支度を整え血の匂いをまとい行く。飽きすら感じてきた、繰り返しの動作だ。しめっぽい布団に、明日も自分は包まっていられるか。
「坂本」
返事はない。彼の寝息が妙に心地よかった。銀時の汚いいびきに紛れて、それでも確かに聞こえてくる。この擬似的な感情に、どれだけ自分が救われているのか。それが具間見えたような気がした。
「達者でな」
先ほどより少し大きめの声で呟き。相変わらずの静かな寝息。しかしそれにまぎれて、「応」という声が、微かに聞こえてきた気がした。















ララバイ。


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