偽者を神様は愛してくれない。 | ナノ




柔造と廉造


「廉造。お前、無理に祓魔塾に通わんでもええんやで」


「…え、なに?突然何言いますのん柔兄」
「突然やない。ずうと前から思てたことや。なぁ、廉造。坊や子猫が祓魔塾にも行くからて、お前まで行かんでもええんやで。正十字学園だけで充分やん」
「え、えええ?なんでよ。坊たちにはそんなん言わんかったくせに」
「坊たちは自分らから行きたいて言わはった、それを止める権利は俺にはない」
「何それ。なんか行くなっちゅうてるみたいやで、柔兄」
「端的に言えばそうや」
「えっ」
「行くな廉造。お前まで祓魔師になる必要はない」

「…なんで?」
「逆に聞くが、お前、祓魔塾に通ってまで祓魔師になりたいんか?どうしても?」
「え、いや…」
「ちゅうか、その分勉強も増えるんやで。普通の授業と祓魔師の勉強と。お前、阿呆なんやから辛いやろ」
「いやそらまあ辛いけど…阿呆とはちゃうわ!阿呆は金兄だけで充分や!」
「お前かて変わらんわ、阿呆」
「ぐっ…頭ええ柔兄に言われるとなんとも…!」
「兄ちゃんナメたらあかんで」
「…い、いや!でもそれ俺の答えになっとらんやろ!」
「なっとるやないか。お前が阿呆やからっちゅう理由や」
「柔兄いっつも辛かろうがなんだろうがやらんといかんもんはやり通せ言うやん!なのに今回は折れろて!?わけわからん」
「今回はやらんといかんっちゅうわけやないからや」
「なんでや」
「なんでも」
「柔兄、そう言うて逃げるのは卑怯やで。俺ももう高校生になるんや。はっきり理由言ってもらわんと」
「全っ然高校生に見えんがな」
「ほっといたって!」

「…お前は志摩家の五男や」
「ん?…うん」
「坊は勝呂家の長男。子猫は三輪家の長男。二人とも、強制的に次期当主にならはる」
「…うん」
「そういう理由なら仕方ないし、自分たちからの希望や。俺はむしろ喜んで送り出す。けどな、お前は違う。志摩の次期当主は俺、しかもうちにはもう俺以外に二人も祓魔師になっとるやつがおる」
「…うん?」
「そやから、お前まで祓魔師になる必要はない。お前は普通に高校生活送って、普通に暮らしてってええんやで」
「普通にってなんや」
「いい女の子と付き合うて、ええ会社に就職して、ええ家庭を築き上げる」
「俺阿呆やから、ええ会社には行かれへんよ」
「別にええとこ入る必要はない。ただ、お前の好きなように生きてったらええってことや」
「命懸ける必要はないんやからって?」
「…そや」
「…俺が祓魔師になったら邪魔かいな、柔兄」
「邪魔や」
「うっそ」
「……」
「柔兄俺と違って嘘下手なんやから、つかん方がええと思うよ」
「…廉造。兄ちゃんの心配、汲んでくれんか」
「いややね」
「廉造!」
「なんで家族の死にに行くのを黙って見送らないかんねん」
「っ」

「そら俺かて痛いのも死にに行くのも嫌やけど、それでも家族らが命懸けて任務に出掛けんの、横目で黙って見てられるほど俺の神経は図太くないで」
「………」
「しかも、誰かが死んだときに俺が泣いてな。お前さっき知らん振りで見送りよったやんて話やんか、嫌やわあそんなん」
「お前泣くんか」
「あ、話の腰折らんでください。…それに、俺、子猫さんと一緒に坊守るのがお役目やし。坊が祓魔師になるっちゅうんなら、理由なんてそれで充分やろ」
「……」
「俺も死にに行くわ。生きて帰るためにやけど」

「…そうか」
「うん」
「そんなら、もう兄ちゃん止めんよ。…ほれ、入学案内書。親父に見せてきぃ」
「あれ、もう届いとったん?おおきに」
「廉造、途中でやめるんやないで」
「おう、そんためにも頑張ってくるわ」
「坊に怪我させたら俺がぶち殺したる」
「えっ何それ怖い…大丈夫やて、そんな心配せんでもー」
「子猫にも、迷惑かけるなよ」
「了解。ほんじゃ、部屋戻るわ、俺」
「うん。今からちゃんと、寮に行く準備とかしとくんやで」
「まだ早いわ!…うん、じゃ」
「…おう」


「…やっぱり阿呆や、あのガキ」
死んでほしくないってのがなんで伝わらんのやくそったれ。














最終エゴイズム


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