精一杯の強がり(廉造/切)






見たくはなかった。貴方が他の人と廊下で楽しそうに話している姿なんて、

私は貴方が好きだから。他の人と仲良さそうにしているところなんて見たくない、なんて我儘は彼女でもない私が言える義理じゃないんだけど。


と、耳に授業チャイムの音が届いたのと志摩君がこちらに来るのはほぼ同時で。

じつは、席が隣なだけ、すこしばかりの特権なのだけれど。



「なまえちゃん、どないしたん?」

「…ん、何が?」

「悲しい顔しとる、なんかあったんか?」

「………ううん、大丈夫」


ほうら、優しい志摩君はわたしにも心配をしてくれる。でもね、他の女の子にも同じようなこと言うんでしょ…?


「ほんま、無理したらあかんで、なんかあったら相談せえな」

「ありがとう、志摩君」


大丈夫だから。ふにゃりと笑顔で答えた。大丈夫、大丈夫だから、精一杯の笑顔で貴方に向けた笑み。またどんどん好きになるから、どうかお願いだから、やさしくしないで。






20110907.



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