甘い熱だけ残して(柔造/切甘)






「ほんまに、行ってまうん?」

「おん……んな悲しそうな顔すんなや!3年だけやろ?」


柔造が正十字学園に向かう朝、わたしは彼を見送りに行った。今までずっと一緒に居た人が居なくなってしまうなんてぼっかりと胸に穴が空いてしまう気分だ。

それもそのはず、わたしは密かに柔造に想いを寄せていたのだから

「……頑張ってな、柔造」

「おん、立派な祓魔師んなってお父見返してやるわ!」

「ふふ、八百造さんに適うはずあらへんやろっ」

「……やっと笑ってくれたな」

「え……」

「やってさっきからお前全然笑わへんから」

「や、やだなあ!そんな事ないよ?ほら、早くしないとバス間に合わないよ」

「……おん、じゃあな」


連絡するからな、と柔造は言ってわたしに背を向けた。その瞬間、じわりと涙が滲む。だけどこんな事で泣いたらだめだとわたしは我慢する。


「あーあー…そない踏張っとったらかいらしい顔が台無しやで?」

「え……わっ、え、え?!」

「なん驚いてんねん?」


わたしは口をぱくぱくと動かすだけで声を出せない、なぜなら彼がわたしの体を引き寄せて笑っているから(柔造はズルい)


「……何でこないな事」

「あない寂しそうな顔されたら、行くに行かれへんやろ」

「ごめんなさい、でも…っ柔造が居なくなるなんて…かなしゅうて…」

「せやな…俺もなまえに会えなくなるなんて悲しいわ」


一旦体を離すと柔造はわたしの涙を手で拭ってくれた。しかしわたしは先程の“寂しい”がぐるぐると頭の中で回っていた。


「柔造?さっき…何て言うたん」

「ん?寂しい言うた事?」

「そ、それ…ってどういう!」


言い掛けた時わたしの唇に何か柔らかい物が(なにかなんて、わかりきっているのに)目の前には柔造の顔が。


「な、柔造…いま?!」

「じゃあ行ってくるわ、正月には帰るし連絡もするから安心せえ」


柔造は言い逃げ犯だ。彼はこちらに手を振り姿を消してしまった。わたしは未だに赤い顔と格闘しながら、とりあえず次に会ったら問い詰めてやろうと思った。





貴方はとても狡い人



20111015





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