理由はひとつ(廉造/甘)






「あのー…なまえちゃん?」

「……なに?」

「いや、俺としてはとても嬉しい状況なんやけどね?…どないしたん?」



廉造は珍しく狼狽えていた。何故ならいつもは恥ずかしがって滅多に甘えてこないなまえが、今は正面から廉造に抱きついているのだ


「何でもいいでしょ?」

「ええけど…いつも頼んでもこない積極的な事してくれへんから」
「……い、から」

「え?なんて?」

「さ、寒いから…!寒いの嫌いなのっ…」


ぎゅうと抱きつく力を強めるなまえに廉造は顔を赤くする。廉造も男の子なので理性と本能が争っている状態なのだ。(押し倒してまえやー:本能)(そないな事したら嫌われるかもしれへんで?:理性)

そのキモチを紛らわせるため、廉造はよしよしと頭を撫でながら外を見た。



「せやね、もう寒なってきたもんなあ…」

「季節って過ぎるの早いよね」

「おん、なまえは寒がりなんやなあ」


そう呟けばくしゅん、と小さなくしゃみが聞こえた。そろそろ寮も暖房つける頃合いかなと考えていればなまえが廉造、と名前を呼んだ。


「なんや?」

「…廉造は暖かいね」

「んー、なんや自分じゃわからんけどなあ」

「…ん、もっとぎゅっとして」

「――――ッ!」


(な、なんやこのかいらしい生き物は!)


廉造の胸に頭をすり寄せるなまえに、廉造の中の理性と本能の決着がつきそうになっていた。(ダメやで廉造、我慢しい!:理性)(なまえは誘ってるんよ…:本能)いやいやいや、なまえはただ寒がっているだけだ!と廉造は自分に言い聞かせた、が


「………もしかして、くっつかれるの…ヤ?」


無意識な彼女の上目遣いに、彼の理性が勝利した。さらば本能、君の事は忘れへんで!



「なまえ、ほんなら一緒に温かくなる事しよか」

「え?……えーっと、廉造?」

「かいらしすぎるなまえが悪いんや、堪忍しいな」


廉造は素晴らしい笑顔でなまえの首に顔を埋めた。

その日、なまえは誓ったらしい。寒くても絶対に廉造に近寄ってはいけないと、





(やけど温かくなったやろ?)
(やりすぎ、いけません!)


2011923.





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