成り行きって怖い(廉造/甘..?)





※本誌裏表紙四コマネタバレ有り






学校が休日の日、うだるような暑さが部屋というか私を襲う。あー、とか、うーとかいいながら氷を頭にあてていると電話がかかってきた。

誰からだろうと携帯に手を伸ばせばディスプレイには“志摩君”の文字が。彼から電話がくるなんて珍しい(一応実は彼氏なんだけどいつも電話じゃなくて会ってるから)


「もしもし?志摩君、どうしたの?」

「なまえちゃんあんな、俺いま今年最大の危機に直撃してるんよ」
「………え?」


真剣な声が聞こえて、どうかしたのだろうかと耳をすます。何かあったのかと心配になる。


「もう坊と子猫さんと奥村くんにも見放されてなまえちゃんだけが頼りなんや…」

「ど、どうしたの志摩君?」

「…この電話を切らんで欲しい、俺がこの苦難を乗り越えるまでずっとなまえちゃんのかいらしい声を聞かせて支えてほしいんや」

「志摩君………」



可愛らしい、そう言われてうれしくない彼女はいないだろう。でもわたしは、今彼の身に何が起こっているのか大体わかってしまった。でもどうにかしてもらいたいからわたしに電話をしてきたのだろう。

暑くて暑くて、外には出たくないが……しょうがない。

わたしは志摩君に一言呟いた。



「………虫、でしょ?」

「ど、どないしてわかったん?!エスパーちゃう?!」

「志摩君が頼りにしたいなんて、虫関係の時くらいにしか言わないでしょ?」

「せやな…いや、けどなこんな姿何回もなまえちゃんに見せられへん思て…誤魔化そう思たんやけど」


何でもお見通しやんな、と言われてわたしはくすくす笑った。そりゃあ好きな人のことはなんでも知りたいからね、なんて言ったら志摩君は電話越しにとてもどもっていた。


「すぐ行く、男子寮入り口?」

「おん、すまんなぁ」



わたしは急いで(といってもすぐ近い場所にあるのだが)男子寮にむかった。すると、ピンク色の頭が見えたので志摩君!と叫べば彼はこちらを見てホッとしたような顔をした。


「ほんっにすまへん…」

「しょうがないよ、誰にだって苦手な物はあるでしょ?」


わたしは志摩君を怖がらせて?いた蝉を足でよけた。このままわたしも来なかったら志摩君はどうするつもりだったんだろう。



「ありがとなあ!もう、なまえちゃん大好きやでっ」

「うわあっ、ちょ、志摩君!」


後ろを振り返ろうとしたらガバリと抱きつかれた。うーん、そんなに虫が怖かったのかな?


「あ、せやなまえちゃんにかいらしい声聞かせてー!言うたんは本当やからな」

「かわっ………いくない」


面と向かって言われると、本当に恥ずかしいからやめてほしい。顔を真っ赤にしてそっぽをむけば、だんだんと暑さがこみあげてきた。


「……うう、暑いよ」

「あ、すまへんな!せや、丁度ええし俺の部屋に行こや」

「え?いいの……?」

「おん、今日は坊達は任務で帰ってきいひんから」



じゃあ暑いし、と男子寮の中に入った時に志摩が後ろでぽそりと呟いた。

帰ってきいひん?帰って……え?帰って、こ、ない?



「帰ってこない…って、あの、志摩君それはどういう?」

「虫さんよけてくれたお礼にたっぷり可愛いがらなあかんよね」

「はい?いや、遠慮しま…」



にこにこ笑顔の志摩君に冷や汗をたらすも、なぜだかいつの間にか志摩君の部屋に居た。


「ほんま可愛らしい彼女もったなぁ俺」

「え、あの、誰か助けてええ!」

その次の日、わたしは目の下に隈を作って祓魔塾に登校した。






20110911.


―――――――――

管理人も虫は苦手。

prev next

 

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -