涙が零れる前に(柔造/切甘)





友達がよく“片想いより両想いの方がつらいよ”と言っていた。だけどそれは付き合っているから言える言葉で。片想いの私には両想いほど羨ましいものはないのだ。


「せやからお前に決められる筋合いはあらへん!」

「大有りや…!申なんかに任せられへん」

「んやと?!」



またやってる、そう思いながら私は遠くからそれを眺める。柔造さんと蝮さんは犬猿の仲らしいけど、喧嘩するほど仲がいいの間違いじゃないのだろうか。とりあえず、これをとめるのは私の役目なので二人の空間に行きたくないが足を向けた。



「こら、二人とも!」

「「なまえ……!」」

「二人とも喧嘩しないの、毎回とめる私の身にもなってよ」

「………すまへんかった」

「おん、なまえに叱られると頭があがらへんなぁ…」


わたしが大声を出したら、二人ともしゅんとうなだれた。ほんと、何でこんな人を好きになってしまったんだろう。蝮さんとお似合いだよ、こうやって見れば。



「大体アンタが悪いんえ、好きだなんて言いよるから」

「ばっ…!お前何言うんや!」

「……え、好き……?」



蝮が口に出した一言に、なまえは二人を見た。柔造は顔を真っ赤にさせて蝮の口を手で塞ぎ、蝮はそれに対して怒りを表しているようだ。

なんだ、やっぱり柔造さんは蝮さんのこと好きだったんだ。なら、わたしは、いま、邪魔者?一気に辛さがこみあげてきたなまえはごめん!と一言柔造たちに言ってその場を走り去った。


「は?ちょお、なまえ?!」

「なんや?あない急ぎおって…」

「しもた!絶対勘違いされたやん、てか、それで逃げるゆうことはアイツ…」

「何をごちゃごちゃ言うてるねん、早う追い掛けえ」



言われなくてもそうするわ!と柔造は彼女の後を追った。その頃なまえは庭の隅にある草影でグッと耐えていた。わかっていたはずだ、わかっていたはずなのに、どうしてこんなに涙が出そうなの?



「もっ、わたしなんか、やだ」

「俺は嫌や、ない、けどな」

「!?…じっ、柔造さん…」


後ろから声が聞こえたので振り替えれば、走ってきたのだろうか肩で息をする柔造さんがいた。


「なん、で」

「そら…お前が勘違いして走って行ってもうたからな…弁解に」

「べん、かい?」

「せや!一度しか言わへんからよく聞き」


すうっと息を吸った柔造さんは、わたしを後ろから抱き締めた。もうなにがなんだかわからないなまえに柔造は耳打ちをした。



「俺が好き言うたのは、お前に対してや」

「う、そ」

「お前に気持ち伝える言うたら蝮の奴がお前を俺には任せられへん言うてな…」


柔造の言葉が真実なのは、腕の力でわかった。わたしは、その言葉を聞いたとたんにぶわっと涙があふれ出てきた。



「うっ、ふえ、」

「ど、どないしたん?!まさか嫌やったんか?!」

「ちが、違うんです、わたしも柔造さんが好きでしたあぁぁ」


そう伝えれば柔造は驚きながらも、うれしそうにはにかんだ。





(君に想いを伝えよう)




20110910.

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