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 万事無事解決?

(金の斧銀の斧パロ)
(すごく馬鹿っぽいです。)


「ユースタス屋ー…もう疲れたんだけど」
「あぁ?お前が勝手についてきたんだろうがよ」

スタスタと先に進むユースタス屋は呆れたようにこちらを振り返ると腰に手を当ててため息を吐いた。だってお前、高々薪となる木を切りに行くためだけにどんだけ歩いてると思ってんだ。そんなのそこら辺の木で事足りるだろうからすぐ終わるだろう、って暇つぶし程度の軽い気持ちで臨んだ俺のことも考えろ。絶対もう三十分は歩いてるってこれ。

「しょうがねェだろ。ここらの木はよく燃えねェんだから」
「あ、ユースタス屋め俺の心を覗きやがったなエッチ」
「口ほどに目が物を言ってたぞ。疲れたんなら帰れよ」
「やだ!」
「…餓鬼か」

ユースタス屋曰く、家の周りに生えている木じゃ事足りないらしい。何でも中に水分を多く含んだ種類の木で、燃えにくいとか。だからちょっと森の奥まで行かないといけないらしいんだけど…どこまで続くんだこの燃えにくい木々は。どこに行ったら燃える木はあるんだ。つうかユースタス屋毎回木を切るためにこんな歩いてたのか。別にうち金あるし、ならこれ普通に売られてる薪を買ったほうが早くねぇか?

「ユースタス屋ー休憩しよー…足が棒だ」
「はぁ?お前そう言って十分ぐらい前に休んだばっかだろ」
「また棒になった」
「知るか」

俺の可愛い願いも聞き入れてくれず、勝手に前を歩くユースタス屋に頬を脹らませる。この脳筋体力バカめ。俺が体力ないの知ってるくせに。
もういっそ引き返してやろうかなと思ったけどこんな森の奥まで来たのは初めてだから、一人で帰ったら確実に迷子になる。こんな広い森で迷子になったらおしまいだ。だからユースタス屋について行くしかないんだけど、ユースタス屋は勝手にどんどん進んでいくからもうついていくのも疲れた。一度そう思った頭は疲れた疲れたとそればかり考えてしまう。別にユースタス屋を困らす気はないけれど疲れたものは疲れたんだからしょうがない。

「ユースタス屋っ」
「あーはいはい。分かったよ、休んでろ」
「…ついたのか?」
「この辺でも別に大丈夫だろ」

我慢できなくて前を行くユースタス屋に後ろから抱きつくと、呆れたようにため息をついたユースタス屋にぽんぽんと頭を撫でられて顔を上げる。
ちょうどたどり着いたそこは木々に囲まれた開けた場所で、すぐ目の前にはちっちゃい湖みたいのがあって何だかきれいな場所だった。森の奥にもこんな場所があるんだなぁとか思いながら、どの木を切ろうかと選ぶユースタス屋から少し離れてその湖に近づく。

「おい、あんま近寄んなよ。落ちるぞ」

そばにしゃがむと指を浸す。冷たくて気持ちがいい。両の掌で汲んで指の隙間から零れ落ちてくるそれはさらさらとしていてとても綺麗な水だった。飲めんのかなこれとか思いながら遊んでいたら後ろでユースタス屋に咎めるように声を掛けられて。
別に平気だと返事をして、立ち上がろうとした瞬間いきなりくらりと目の前が揺れた。あー…立ち眩み…え、嘘、ここで?と思ったときにはもう遅かった。

「馬鹿、おまっ…!」

驚いたようなユースタス屋に腕を引かれる。瞬間バチャン!と大きな水の跳ねる音がして、一瞬すぎて何が何だか分からない。
絶対に落ちると身構えていた俺はいつまで経っても訪れないその衝撃にそっと目を開けた。そうして全く平常と変わらない自分を見て先ほどの音を思い出し、はっと湖の方を向いた。

「ユースタス屋!」

返事が無い、ただの屍のようだ。
いやいやいや、遊んでる場合じゃなくて。慌てて傍に近寄ると小さく揺れる水面を見つめる。俺はカナヅチだから泳げないけどユースタス屋だって同じだ。でも泳げないとかいって、泳げないなりに何かしら反応があるはずだろう。なのに水面の揺れはどんどん収まっていって、終いには辺り一面静かになってしまった。それに俺の顔はサッと青褪める。

「どうしよ…」

ぼそりと呟いた言葉は案外辺りに響いた。どうしよう家に帰れなくなった。
なんてこんな状況下でもユーモアを忘れない俺のハイスペックな脳には相変わらず感心するが、泣きそうな表情をしながら考えたって滑稽甚だしい。そもそもそんな考えすらどうでもよくて、どうしよう、ユースタス屋、と何となしに湖へとちゃぷりと腕を入れた。ユースタス屋がこの腕に掴まってくれやしないかと、ありもしない望みに賭けようとした瞬間パッと湖が青く光って目を見開く。

「…何かお探しか」

突如現れ出た長身の男に驚いて声も出ない。ゆったりとしたブロンドの長い髪を携えて俺の目前に立つ男は湖の上に立っていた。明らかに人間ではない。誰だ?と俺の表情が物語っていたのだろう、そいつは自らこの湖の精であるバジル・ホーキンスだと名乗った。精が住み着くなんて余程珍しい。だからあんなに綺麗だったのか、とどうでもいいことを考えながらその男を見つめた。

「用が無いなら戻るぞ…」
「あ、待て待てあるから!ここにさっき男が一人落ちただろ?」
「ああ…昼寝をしていた俺の真上に落ちてきた奴か…」
「そいつを探してる!」
「ふむ…了解した」

精の中にも良いものと悪いものがあるとは聞いたことがあったがどうやらバジル屋は前者らしい、と湖の中に引き込まれたその姿を見て思う。
本当よかった、とほっと息を吐くと再度現れたバジル屋に礼を言おうとして。

「お前が落としたという男は…」

結局言えなかった。



「ったく…だからあんま近づくなって言っただろーが、俺の言うことが聞けないのか?トラファルガー。…まあ言うこと聞けないならお仕置き、だよなぁ…?」
「へっ!?」

バジル屋によって連れてこられたユースタス屋は最初俯いていてピクリともしなかったが、地に下ろされるとスイッチが入ったように途端顔を上げた。濡れたせいで張り付く髪をうざったそうにかきあげると少しイライラしたように舌打ちして、その首筋を流れ落ちる水滴にどくりと心臓が跳ねる。そしたらユースタス屋と目が合って、慌てて赤くなった頬を隠すように視線をそらすとぐいっと顎を掴まれて正面から覗き込まれてしまい。にやりと意地悪そうな顔で笑ったユースタス屋に耳元で囁かれた言葉に思わず間抜けな声を上げてしまった。

「ちょ、バジル屋…っ、ユースタス屋になんかしたのか!」
「何も。ただ聞きたいことがあってな、お前が落としたのはその『俺様で意地悪なユースタス・キッド』で間違いないか?」
「は!?俺が落としたユースタス屋はこんな頭沸いたキャラじゃないぞ!」
「そうか…。では…」

今にも押し倒されそうな状況にじりじり後ずさるとバジル屋の念を押すような声が聞こえて慌てて首を振った。なんだよ俺様で意地悪なユースタス屋って!そんなユースタス屋落とした覚えねぇよ俺は!

少し考え込むような顔をして、ちゃぷりと湖の中に戻ってしまったバジル屋は何故かこのユースタス屋を連れて帰ってはくれなかった。そのお陰で俺は今非常に切羽詰った状況にいる。

「ぁ、っ、ちょ…ふぁ!?ゃ、だめだって、ユースタス屋ぁっ」
「言ったろ、お仕置きだって。俺にこうされるの好きだろ?」

だ、れ、が!と叫びだしたいが今の俺にそんな余裕はない。するりと服の中に入り込んできた手がいやらしく肌に触れて、ちゅくりと耳に触れたぬめるような感触にびくりと体が震えた。耳朶を軟く噛んで、輪郭をなぞると中にまで進入してきた舌に慌ててユースタス屋の肩を押し返すけれど総スルー。ここ外なんですけど勘弁してくれとか思いながら必死でそれ以上進ませないように抵抗していたら。

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