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 淫らなキス

(シャイローde第二弾)

心臓がドクドクとうるさい音を立てる。それがあまりにも激しいもんだから、ユースタス屋にも聞こえてしまうんじゃないだろうか、何て思うぐらいだ。


(…逃げたい。)

じっと注がれる視線に俯く。敵前逃亡とは情けない話だけれども背に腹はかえられない。一刻も早くこの空間から抜け出したかった。

「…トラファルガー」
「っ!」

名前を呼ばれただけなのに、びくりと肩が震えて、そのまま反応もせず俯いていたらユースタス屋に顔を上げさせられた。
もちろん目なんて合わせられる訳もなくて自ずと視線をそらしてしまう。なのにユースタス屋はじっと見つめてくるから、見られている、という感覚に、顔に熱が集まっていく。


(なんで、こんな…っ)


じわじわと自分の中の羞恥心が高まっていくのが分かる。何故かユースタス屋に見つめられると恥ずかしくて仕方がない。ユースタス屋もそれを分かってやってるんだから質が悪いと思う。穴があったら入りたい気分だ。


「…っ、ユースタス、屋」
「あ?」
「…あんまり、見んな」
「別にいいだろ、減るもんでもねェし」

そう言って見つめてくるユースタス屋に眉根を寄せた。
俺的には確実に現在進行形で何かが減っていってると思うんだけど。


「…本当に見てて飽きねェな、てめェは」

ずっとこうして見ていたい、と呟かれた言葉に思わず首を横に振った。そんなことしたらきっと堪えられなくなっておかしくなる。
もういい加減に…とユースタス屋を見れば、ふっと笑われて、



(あ…ウソ、待って、まだ、)


キスされる。



そう思ったときにはもうユースタス屋の顔が目前に迫っていて、体を引こうにも腰に回された手がその邪魔をする。逃げられないのは明らかで、せめても、と涙の滲む目をぎゅっと瞑ると口を固く結んで身構えた。



(…?あれ…?)


ちゅ、と柔らかく降ってきた唇は俺の予想する場所とは違い、思わずぱちりと目を開ける。そうすれば目と鼻の先という、近すぎる距離で、ユースタス屋がにやにやと笑っていた。

「何変な顔してんだ?」
「…っ、してない」

嵌められた、と思ったときにはもうすでに遅く、額を押さえて睨みつけるとユースタス屋は悪戯が成功した餓鬼みたいに楽しそうに笑っていた。

「期待外れで悪かったな」
「誰がそん…っ!」

な期待するか、と言おうとして形作られた唇は、ユースタス屋の舌が耳を這う感覚に全て奪われた。ゆっくりと輪郭をなぞっていた舌が中に入ってきては、くちゅ、と粘着質な音を立てられる。それがまた鼓膜に響いて肌が粟立った。
堪らずユースタス屋のコートを掴むとそれにまたくつりと笑われる。相変わらず弱いな、と吹き込むようにして囁かれた。

「んな泣きそうな顔すんなよ。…もっと見たくなる」
「ゃ…っ、も、黙、れ…!」

くつくつ笑ったユースタス屋の手が腰を撫でる。明確な熱を孕んだその手つきに条件反射でびくっと肩が跳ねた。それにまた笑われて、羞恥と屈辱で分かりやすくも赤くなってしまう自分に唇を噛み締めた。


(こいつ絶対遊んでやがる…!)


にやにやと笑うユースタス屋をきっと睨み付けるが特に効果はなかったらしく、誘ってるのか?と目尻にキスされた。誰が、と言い返してやりたかったけど上手く言葉にならなかった。
やられっぱなしは性に合わないくせに何故かユースタス屋のこととなるとその前に受け身の体勢をとってしまって駄目になる。


(ムカつく…。)


ムカつくムカつく。俺ばっかりこんなの狡い。
仕返しの意味も込めてユースタス屋を引き寄せると唇にキスをする。
…予定だった。


引き寄せれば予想以上の近さ(当たり前だけど)にいきなり羞恥心が襲ってきて、でもここで止めたらそれこそ馬鹿にされるとか、そもそも今更止められないとか、でもやっぱり無理そうだ、とか。思考回路がぐちゃぐちゃに絡まっていって、勢いでぶつけた唇は結局毒々しい赤が映える唇と触れ合うことはなかった。鼻筋にぶつけた唇に、一瞬だけユースタス屋が目を見開いたような気がした。でもそんなこと構ってられなくて唇を引き離すと赤くなった顔を悟られないように俯いた。


(あー…俺の馬鹿…これじゃまたユースタス屋に馬鹿にされるだけだって…っ)


案の定頭上に降り注ぐ笑い声に体が固まる。何を言われるのか、どう言い返すか、頭の中で無駄なシュミレーションをするのはもう癖みたいなもんで。
くつくつ笑うユースタス屋の、不意に耳元で囁かれた言葉に思わず目を見開いた。


「はっ…いい根性してんじゃねェか。…お望み通り可愛がってやるよ」
「馬鹿、なに言っ…んんっ!」


…と言うより自分の行動が墓穴を掘っているだけのものと気付いた。




「んぅ、んっ…ん…」

ペロリと固く閉ざされた唇を舐められて、啄むようにキスをされる。いつも強引に割り開く舌はゆっくりと唇をなぞり、その触れるだけのキスに何か甘く痺れるような感覚が広がっていった。そうして角度を変えて何度も重ね合わされる唇は柔らかくて気持ちがいい。

「…トラファルガー…口、開けろ」
「っ…!ぁっ、ふ…っ」

その優しいキスに浸っていたら不意に唇を離されて、すぐの距離でユースタス屋に呟かれた。ユースタス屋の鋭い目が俺を射ると首を振ることも出来ないで、涙の滲む視界で恐る恐る口を開く。
そうすれば口を開くと同時に塞がれて、遠慮のないユースタス屋の舌が口腔へと入り込んできた。

「んゃっ…ふっ、ぁ…っ!」

温かく柔らかいユースタス屋の舌が舌先に触れただけで、びくりと肩が震えて、逃げるように舌を引っ込めてしまう。でもすぐに追いかけられ、いとも簡単に絡め取られると強く吸われて閉じた瞼の内側が熱くなった。

―ユースタス屋のキスだけでも必死なのに、するりと服の中に入り込んできた手が乳首に触れて思わずくぐもった声が洩れてしまう。
ぎゅっと強く摘ままれると痛いはずなのに、どこかで快楽を感じ取っている自分に顔が赤くなった。だがそれすらもお見通しだと言うように爪を立てられ、指の腹で押し潰すように刺激される。そのたびに腰が跳ねて苦しくて仕方がない。しかもユースタス屋は何故か片方だけしか弄ってくれなくて、それがまたムズムズとした感覚に陥らせた。

「んぁ…ふっ…んん…」

いつもより濃厚で長いキスにだんだんと息苦しくなってきた。自ずと眉間に皺が寄り、抵抗の出来ない体は、それでもユースタス屋にしがみつくだけだ。

―…苦しい。
それなのにユースタス屋の手がしっかりと後頭部を押さえてるから逃げることも出来ない。ぞろり、と尖らせた舌先で上顎を舐め上げられるとびくびくと体が跳ねて、それにまた深いキスをされた。
何だか頭がぼうっとしてきて、体の力も抜けてきた。酸欠かもしれない。飲み込みきれなかった唾液が顎を伝うのも気にならないくらい顎がだるい。ねっとりと絡み合う舌がユースタス屋のなのか、俺のなのか、だんだんと分からなくなっていく。

「…はっ」
「…っ、ふ…は、ぁ…はっ…は…」

最後に舌を甘噛みされて、あやふやな境界は断ち切られた。
唇が離されると唾液が糸を引いて繋がる様子に激しさが窺い知れてユースタス屋の顔も見れずに俯いた。
今までロクに取り込んでいなかった冷たい酸素が肺を切る。肩を必死に上下させた状態で、まだ呼吸も整ってないのに、するすると服をたくし上げられた。

「…こっち、触ってもねェのに尖ってるぞ」
「っ…!んゃ、あ…」

ふっと笑われると耳元で囁かれる。淫乱だと遠回しに揶揄されているような気がしてじわりと目に涙が浮かんだ。
焦らすようにその周りをなぞる動きが、触れるか触れないかの絶妙な距離が、もどかしくて首を振った。

「ぁ、やっ…ユー、スタス、屋ぁ…ちゃん、と…っ!」
「ちゃんと…何だよ」
「っ、ふ…ちゃ、と…触っ、て…」

じれったい。もっといっぱい触ってほしい。

でもまさかそんなこと言える訳なくて、それでも必死に切れ切れになって伝えると涙で滲むユースタス屋を見上げる。口で伝えられないことは目で訴えれば、大抵ユースタス屋は理解してくれた。…意地悪なときは以外は。

「じゃあこれ、自分で持て」
「やっ…!脱ぐ、から…っ」
「駄目だ」

どうやら理解はしてくれたらしいけれどその代わりにたくし上げられた服を半ば無理矢理持たされた。自ら晒すという格好にじわりと涙が滲み、羞恥心から自ずと持つ手が下へとさがっていく。そうすれば、もっと上げろ、とか、ちゃんと持て、とか少し怒気を孕んだ声で言われて、びくりと肩を跳ねさせると唇を噛み締めてそろそろと首元まで持ち上げた。

「いいこだな」
「ひ、ぁ…っ、あっ、あ…」

愛しむように囁かれて、今の今まで放置されていたそこを口に含まれる。
尖っているそこをさらに尖らせるように下から上へと舐め上げられ、時おり強めに歯を立てられる。痛いのにどこか気持ちいいその感覚に、先程の羞恥と快楽が自分の中で渦巻いた。

「ん、ぁっ…!ゃ、ん…」
「…何か、ここだけでイけそうじゃねェ?」
「やっ…無理に、決まっ、…っ」
「どうだかな」

お前淫乱だしな、とにやにや笑われて耳元で低く囁かれる。ずくり、とそれにまた下腹部に熱が溜まっていくのが分かって、そんな自分を振り払うようにユースタス屋を睨み付けた。

「……だからその顔止めろって言ってんだろ。…それとももっと虐められたいのか?」
「っ、な訳…や、ぁっ!」

言葉を遮るように乳首を強く摘ままるとびくりと肩が震える。こういうのが好きなくせに、とくつくつ笑ったユースタス屋に腰を掴まれて腿の上に跨がらされた。

「イきたいだろ?」
「ひ…っ、ぁ…」

するり、とズボンの上から自身をなぞられて思わず腰が跳ねる。一度も直接的な刺激を与えられていないそこは触れられただけでも強い快楽を生み出した。

「なぁ、イきたくないのか?」
「あ、ゃっ…っ!…イきた…っ」

ふるふると首を振って呟くとユースタス屋を見つめる。はぁ、と唇から勝手に熱い吐息が洩れた。それが何か、如何にも期待している、というような雰囲気を醸し出していて自ずと体が熱くなる。

「なら…ここだけでイけるよな?」
「なっ、…やっ!無理…ぃっ」

ピンと尖った乳首を指先で弾かれてびくりと体が震える。あまりの言いように首を振って嫌だと伝えてもユースタス屋はそれを無視して行為を進めていく。弄られて赤くなったそこをまた口に含まれ、もう片方も指先で同じように刺激されて。開いた片手はゆるゆると腰を撫でていて、それがまたじれったい。

「ぁ、ん…は、っ、あっ…や、ぁ…」
「嫌だ、とか言って腰揺れてるし」
「…っ!ん、ゃ…知らな、っ…勝手、に…っ」
「…勝手に、か。…エロいな」

ふっと笑われて呟かれた言葉に目を強く瞑って俯いた。嫌なのに、理性に抗う本能は自分に都合のいいように動いてしまう。ユースタス屋の腿の上で勝手に腰を振りながら、乳首を弄られながら、気持ちいいと思ってしまう自分が一番嫌だった。

「あっ、あ…や、ユースタ、屋…ぁっ」
「ん?」
「やっ、も…イきたい…」

涙で滲む視界でユースタス屋を見つめる。
―早く熱を解放したくて堪らない。でもそのためには刺激が足りなくて。

赤く腫れた乳首を引っ張られてびくびくと体が揺れる。温かい舌の感触にぞくぞくする。決定的な刺激を求めて勝手に腰が揺れ動く。

――イきたい。
焦らされた身体はそればっかりで、頭がおかしくなりそうだ。

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