Log | ナノ

 エゴイズム恋愛論

ユースタス屋の顳に両手でそっと触れると、とくとくと脈打っているのが分かる。動いているのは生きている証拠。それが何とも言えない感情を引き起こす。
これは一体何なんだろうか。生きていると確認する度に俺は。

「…何してんだ」
「生存確認」

眉根を寄せたユースタス屋に至って普通に答える。掌に伝わる心地のいいリズム。刻んでいるのはユースタス屋。ああ、生きている。
瞳を見つめ上げると腕を掴まれて抱き寄せられる。すっぽりとユースタス屋の腕の中に収まると頭を胸に押し付けられた。

「こっちのが分かりやすいだろ」
「なにが?」
「生存確認」

皮膚を通して伝わる鼓動に確かに、と俺は小さく頷いた。何も鼓動だけじゃない。ユースタス屋の体温も伝わる。喋ればその振動も。呼吸の音も。
何もかもが全て、ユースタス屋は生きていると示していた。それに俺の心はまたざわりと蠢く。

「なあ、」「あ?」
「死んで」
「…何でだよ」
「死んでほしいから。あと、ユースタス屋が好き」

最後のは関係ねェだろ、と言ったユースタス屋に首を振った。これが一番重要なのに、分かってないな。
頬に触れると両手で顔を包み込む。じっとまた目を見つめた。俺が映ってる。笑えば瞳の中も笑う。

「お前が好きだから全部欲しい。でも生きている限りお前はお前のものだ」

だから死んで。

それだけ言って口を閉じると黙って見つめる。ユースタス屋も俺を見つめる。
ユースタス屋の目には今俺だけが映ってる。そう考えると堪らなかった。

ユースタス屋は目を細める。唇が笑った。耳元で囁かれる。

いいぜ。

くちゅ、と音がした。ユースタス屋の舌が耳を舐める。びくりと肩が跳ねる。甘ったるい空気。


「その代わりに、だ」


そのまま下りてきた舌が首筋を舐める。

俺はてめェにキスすることも抱くことも、ましてや話しかけることも出来やしねェ。触れることも抱き締めることも、だ。

それでいいのか?とユースタス屋が尋ねるから俺は首を横に振るしかなかった。

「そんなの嫌だ」
「なら諦めろ」

それも嫌だと言えば我儘だなと返される。俺はいつだってそうだ。欲しいな、ユースタス屋が。俺のものにならないお前なんてやっぱり死ねばいいんだ。

ユースタス屋の唇が俺の唇に触れる。舌が入り込んできて唾液が交じり合う。
この舌を噛み千切ったらユースタス屋は死ぬかな。だが緩く舌を噛んだだけで止めた。
こういう時に不公平だと俺は思う。だって俺はもうとっくにユースタス屋のものなのに。




[ novel top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -