▼ そんな君に夢中
(シャイローde第一弾)
俺の恋人は面白いぐらい行為に対する免疫がない。
例えばどうしようもないくらいこいつが愛しくなって(俺にだってあるんだよ。)強く抱き締めてみたりすると、こいつは途端に石化したように動かなくなる。
例えば「愛してる」「好きだ」なんて言葉(滅多に言わねェけど。)を素直に伝えれば、こいつは顔を真っ赤にして何も言わずに俯いてしまう。
例えばキスするとそれだけで涙目になる。ディープじゃなくてバードで、だ。舌なんか入れた暁には涙目どころか実際に泣かれる。
だからセックス何てしようもんならこいつは爆発しちまうんじゃないか、とまだ手を出していない。
でも自分からする分には平気らしい。所構わずやってくるのだからきっとそうだろう。
ということはもしかして押されるのが苦手なのかもしれない。慣れてないのか?
「ユースタス屋ぁーお前酒くさーい」
「そりゃこっちのセリフだてめェ。酔ってるだろ」
「はぁ?酔ってねーし!」
俺の膝の上に座ってけらけら笑うこいつは完全に出来上がっていた。そんなに度数が高いものを飲ませた記憶はないんだがな。
別に元から期待しちゃいないが酒を飲んだらエロくなる、なんてことはまずありえない。酔うとそこら辺の酔っ払い同様かなりウザい。しかも笑い上戸。何一つおかしなことはねェのに一人でけらけら笑ってやがる。些細なことで永遠と笑ってるもんだからこっちとしては相手にするのが面倒でしょうがない。それで蔑ろにすれば拗ねるのだから酔ったこいつの相手をするのはあまり好きじゃねェ。
「ユースタス屋ー」
「あ?」
「好きだ」
ふわり、とトラファルガーは笑って言った。こいつはいつも唐突だ。
だが今まで様々な表情を見てきたがこいつのこんな顔は見たことがない。いつもの皮肉な笑みでもムカつくような変態的な笑みでもない。純粋な笑顔だった。
首に抱きつくトラファルガーを堪らず抱き締める、と案の定ピシリ、と音がしそうな勢いで固まった。酔っていても感覚は同じらしい。いつもがあれだからこういう反応されるとやっぱりもっと見たくなる訳で。
「俺も好きだぜ…?」
「〜〜っ!」
耳元でそっと囁けばトラファルガーの肩がびくりと揺れる。顔は肩に押し付けられて見えないが覗く耳は赤く染まっていたので容易に想像が出来た。
「こっち向けよ」
「っ、やめ…!」
肩から引き剥がすと顎を掴んで持ち上げる。じわりと涙が浮かんでいる瞳にキスをした。次いで額や頬にもキスをする。最後に唇にキスをすると開いたそこから舌を滑り込ませた。逃げようとする舌を絡めると後頭部を押さえつける。
「んんっ、ふ…ぁ、ん…っ」
くちゅくちゅと唾液の絡まる音がする。好き勝手に口腔を犯し、角度を変えて何度も追いかけるように舌を絡める。抵抗も出来ないトラファルガーは顔を赤くさせ、時折びくびくと肩を震わせ必死に堪えていた。
「ふっ…はっ、は…」
「可愛いな、お前」
最後に唇を舐めるとこいつは赤い顔をさらに赤くさせて俯いた。唇を離すと肩を上下させ荒く息を取り込む。生理的な涙か羞恥心からくるものかは知らないが、ぽろりと涙を溢した。それを追うように舌を這わすと涙を舐めとる。
「〜〜っ!……ユースタス屋なんて…!」
「あ?」
「大好きだ!馬鹿!」
きっとこちらを睨み付けているらしい瞳。でも俺から言わせればただの涙目の上目使いにしか見えない。しかも内容が内容だ。こいつは俺の理性を試してるのか?
「なぁ、」
「ん?」
「あんま可愛いことばっかしてると襲うぜ?」
「っ!!」
にやりと笑って囁くとトラファルガーは面白いぐらいに肩を跳ねさせた。また泣きそうな顔してるし。大丈夫なのか?俺(理性的な意味で)と思いながらも今は抱き締めるだけにしておいた。