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 実験失敗、あるいは一種の成功

(書類管轄課×新薬研究課)


朝っぱらから煩い電話に耐えかねて出ると、相手は今にも泣き出しそうな声で話しかけてきた。

『ユースタス屋ぁ…』
「…何だ、てめェか」
『何だじゃねぇよ!こっちは一大事なんだ!』
「あ゛ー…何がだよ…」
『いいから早く来い十分で来い!…ユースタス屋ぁ…早く…っ』

それだけ言うと肝心なことは何も話しちゃいない電話は唐突に切れた。何か最後の方エロかったな…と携帯片手にベッドの上で船を漕ぐ……。

がばっと音がしそうなほど瞬時に起き上がった。最後の方エロかったなじゃねェだろ俺頭イカれたか?と携帯を見つめる。いやいや問題はそこじゃないだろと頭を押さえた。確かにあいつは泣き出しそうな声で話しかけてきたが最終的には本当に泣いてた、ような気がする。早く来いと言うからには多分家にいるんだろう。もう一度携帯を見れば十分で来いと言われてから五分経っていた。


ドアノブに手をかけると案の定簡単に開いた。鍵を閉める癖は未だついてないらしい。
勝手に入ったはいいがリビングにはいなかった。なら寝室か?と進めばシーツにくるまった奴が目に入る。トラファルガー、と後ろから声を掛ければ、遅いとシーツの中から声が聞こえた。

「何してんだお前…来てやったんだから出てこいよ」
「ばっ…!止めろ引っ張るな!」

掴んだシーツを引っ張れば内側からも引っ張られる。暫く続けていたがいい加減とっとと出てこい、と思いっきり引っ張ると瞬間、ちらりとこいつの顔が目に入った。いや、頭…についた耳?に目がいった。
呆気に取られて力が抜けたと同時にシーツを引っ張り戻される。トラファルガーは未だそれにくるまったまま起き上がるとベッドの上に座った。下から窺うようにして見つめ上げる視線と目が合う。トラファルガー、と呟いて安心させるように頬に触れる。とシーツを払い除けた。あっ、てめェ!と叫んでももう遅い。油断してるのが悪いんだろ。

「…どうなってんだよ」
「やめっ、見るな!」

また隠そうとするので両腕を掴むとまじまじと見つめた。本来人間の耳があるべきはずの場所に猫の耳…?が生えてやがる。

詳しく聞けば新薬の開発途中でとりあえず試験的な物が出来たらしい。だが誰も飲んじゃくれない。(そりゃそうだ、こいつの作ったものはロクなもんがないからな。)なら自分で作ったものだし何とかなるかと思って、珍しく自分で飲んでその日は寝たらしい。そうして朝起きたら耳が生えてたんだと。こんなことなら無理矢理にでもペンギンに飲ませれば良かった…とトラファルガーはぶつぶつ呟きながら言った。

「どうせまたロクでもねェもん作ってたんだろ」
「それが違うんだな。動物が持つ身体的能力を人間にも取り入れられないかと考えて作ったものだ」

珍しくまともな思考回路で作ってんじゃねェか。変な媚薬とか開発されるよりも数倍マシだ。
だからこれは多分薬の副作用、とトラファルガーは言った。てかそこまで分かってしかも自分で作ったのなら別に心配ねェじゃねェか。

「てめェだって心配ないと思ったから自分で飲んだんだろ?」
「だからこんなの計算に入ってなかったから困ってるんだろ!」

いつ治るかもどうしたら治るのかも分かんねぇし、調べるためには研究室行かなきゃいけねぇのにこんな格好で行くのは嫌だし、でも行かなきゃ調べらんねぇし!
とトラファルガーは一気に喋る。黙って聞いていたが相変わらず引っ掛かることが一つ。

「つうか新薬作るんならうちに書類回せって何回言わせる気だ?まだ貰ってねェぞ」
「…あ……いやでも今回のはなかなかまともな方だし、」
「じゃあいつも作ってんのはまともじゃないと自覚があってやってんのか」
「……」
「自業自得だろ」

今日は折角の非番なのに朝っぱらから叩き起こされてちっとも眠っちゃいない。日頃の行いが悪かったと思って自力で解決するんだな、と言って帰ろうとすればがしっと腕を掴まれた。

「こんなに恋人が困ってんのに帰るってどういうことだこのバカスタス!」
「要はてめェが恥を忍んで研究室に行きゃいいだけの話だろうが」
「だからそれが嫌だから困ってるっつってんだろ!」

きっとこちらを睨み付けるトラファルガーを改めて見やる。その耳はまるで人間の耳がそっくりそのまま猫の耳になったかのように、いつもこいつが付けているピアスまできちんとついていた。耳だけじゃなくご丁寧に尻尾までついてやがる。ここまでくるとなかなか面白いかもしれない、と耳に手を伸ばした。

「いった…引っ張んな馬鹿!」
「ああ、わりぃ…神経繋がってんのか」

本当にくっついてんのかと引っ張ればトラファルガーに振り払われる。人間にはないものだから神経過敏なのかもしれない。
ゆっくり撫でるように触るとびくっと肩が震えた。手触りは本物の猫のようだし、よく見れれば薄く血管が浮き出てる。副作用のくせに良く出来たもんだ。

「んっ、は…も、いいだろ…」
「何だよ、感じてんのか?」

ふ、と笑うとベッドに押し倒す。軽くキスを落とすと悪戯に息を吹き掛けた。それだけでびくびくと揺れる体が面白い。こんな姿滅多に見られるもんじゃないし少し遊ぶのもいいかもしれないと思った。

「ん、ぁっ!ふっぅ…ゃっ、はな、せっ!」

耳の中、柔らかい部分を指先で撫でる。トラファルガーは目に涙を溜めたまま身を捩るようにして逃れようとするが無駄で。それを尻目に服の中に手を入れると乳首を弄る。

「ぁっ、やぁっ!そこっ、舐め、な…ひっっ!」
「すげェ感度いいなこの耳」

べろりと舐めるとトラファルガーは目を見開いてびくんと震えた。瞬いた瞳から涙が溢れる。良くは分からないがいつもより感じてるのは確かだ。くつりと笑って乳首を指先で摘まむとぐりぐり押し潰す。

「や、めっ!んっゃ、やぁっ、あっぁっ、い、ひ、あっ!」
「…はっ、イっちまうほど気持ちよかったか?」

少し弄っただけなのに内部は余程気持ちいいのか、指の腹で強く擦るとそれだけで白濁を吐き出した。
溢れ出る涙を舐めとると下着ごとズボンを剥ぎ取る。そこで揺れ動く尻尾に気付いて試しに掴むとこれまた大袈裟にトラファルガーは体を揺らした。

「あっはぁっ!やっ、さわ、っんぁあっ!」
「こっちも大分気持ちよさそうだな」

掴んだそれをまるで自身を抜くかのように上下に擦る。それにトラファルガーは首を横に振った。
まだ一度も触っちゃいないのにこいつのモノからはまた先走りが溢れ出ている。快楽に堪えるようにシーツを握り締めるその姿に目を細めた。

「もしこのまま戻らなかったら俺が飼ってやるよ」
「ん、はっあ!ゃあ、あっあっあ!」

ぐっと後ろに指を突き挿れると中を弄る。与えられる快楽に必死でさっきの言葉は聞こえたかも分からない。それならそれで聞き流してくれた方がいい。

「首輪付けて鎖に繋いで閉じ込めて…好きだろ?そういうの」
「あっあぁっっ!きっ、そこ、は、ゃぁあ!」

尻尾への愛撫も止めずに前立腺を刺激するとトラファルガーが腕を掴む。抵抗のつもりだろうが、力はまったく入っていないのでただ添えるだけだ。それに気にせずぐちゅぐちゅと音を立てると感じるところを責め立てる。そろそろいいかと指を引き抜くとびくびく震えながらトラファルガーは荒い息を吐いた。

「ロー…挿れるぞ」
「ん…ぁっ!?やっ!きっ、ひ、あぁあっ!」

制止も聞かずに一気に奥まで押し入れる。その強い刺激にトラファルガーは喉を反らすと一際大きく震えて絶頂に達した。それでも止めずに出し入れを激しくしてやると必死に首を振る。ぼろぼろと溢れ落ちた涙に舌を這わせた。

「尻尾挿れられてイきやがって…とんだ淫乱だな」
「ひあっあ!やっあ、ちが…っ!ふ、きっ、どぉ…っあ、抜、て、ぇっ!」
「…抜いてほしいのか?」

くつくつと笑って引き抜くとぐちゅっといやらしい音を立てて奥まで押し挿れる。それに体を震わせると泣いて赤くなった目がこちらを捉えた。今にも溢れでそうなほど涙の溜まった目尻にキスをする。
キッド…と懇願するように見つめられて涙の跡が残る頬を撫ぜた。それにギリギリまで引き抜くと、にやりと笑って一気に奥まで突き上げる。

「ひっあぁあっ!やっ、あっあっ!」
「気持ちいいくせに嘘言っちゃ駄目だろ?」

半開きの唇からはだらしなく唾液が溢れ、悲鳴とも嬌声ともつかないような声が響く。中を締め付ければその分尻尾が刺激され、力を抜こうとすればその分強い快楽が直に伝わるのだろう。どうしようもない快感に逃げようとする腰を掴むと容赦なく前立腺を抉る。自らの尻尾を咥え善がる姿はどう見たって淫乱としか思えない。

「ふぁあ!やっあ、ひっ、いく、い、ぁあっ!」

それに奥まで突き上げるとトラファルガーは幾分薄くなった白濁を吐き出す。そりゃ三回もイってりゃな、と尻尾を引き抜いた。
余韻に浸ったままでびくびくと震える体を反転させると腰を掴んで上げさせる。猫は猫らしく四つん這いになって喘いでろ、と言い放つと掴んだ腰を引き寄せて一気に押し挿れた。

「あぁっあ!やっ、まっあ!ひ、ぁあっっ!」

首筋を舐めると開いた手で乳首を弄る。時おり爪を立てやるとトラファルガーは首を横に振った。
舐めていた首筋に衝動のまま歯を立てると中がきつく締まる。それに嘲笑うと律動を激しくした。相変わらず痛いのは好きらしい。

「あっあっ、ゃっも、こわれ、ぇ、あっっ!」
「っ、壊れちまえ」

上から覆い被さるようにして押し付けると奥深くまで入り込んでいく。髪を掴むと無理矢理にこちらを向かせてキスをした。舌を絡ませ好き勝手に口腔を犯す。嬌声を舌先で転がすと飲み込んだ。

「ひ、ぁっ!だめっ、あっあっ、ぃく、いくっ!」
「ロー…っ、お前エロすぎ」

唇を離すと飲み込みきれなかった唾液が顎を伝う。快楽に頬を染めながら涙を溢す姿に思わず喉をならした。
そのまま後ろから激しく突いてやると泣きながら絶頂に達する。同時に起こる中の強い締め付けに息を詰めると眉根を寄せた。

荒い息をしたままぐったりとした体。首筋にキスを落とすと挿れたままで俯せた体を仰向けにさせた。足を肩に担ぐとにやりと笑ってまた律動を開始させる。

「ひっ、あ?!ゃっ、なっで、ぇっ!」
「俺はまだイってねェんだよ。自分だけ気持ちよくなってんじゃねェ」
「あっぁ!ゃっ、も、むり、ぃっんぁあ!」

自分の下で乱れ喘ぐ姿に目を細めると唇を舐めた。これなら首輪をつけて飼うのも悪くないかもしれない。





*

「あ、先輩!この間の実験どうなりましたか?」
「あれは破棄だ。白紙に戻しとけ」
「えーもったいない。試験的とはいえ薬も出来たんでしょ?それになかなか面白そうな…」
「いいから言う通りに動け。消されたいのか」
「むー……いいじゃないですか別に耳も元に戻ったらしいし…」
「おい待てシャチ。耳がどうしたって?」
「ユースタスがキラーに話してたんですよ。先輩、あの作った薬飲んだら副作用で猫耳生えたらしいですね」
「……へぇ、ふぅん…ユースタス屋がキラー屋に、なあ…」
「ちょ!先輩痛い痛い!腕折れますって腕が!」




「おいキッド、何処からともなくとてつもない殺気を感じるんだが」
「俺は何だか原因が分かる気がするぞ」
「また痴情の縺れか」




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