なんて無謀な恋をする人 | ナノ

ちょっと状況が把握しきれないんだが何で俺こいつに抱き締められてんの?



段々ユースタス屋を幽霊だと認めざるを得ない窮地に立たされてきて。ああどうしようってかお前いつまでここにいんの?とか思いながら椅子に座ろうとしたら何か抱き締められた。そして俺は質問攻めです。俺の方が聞きたいことたくさんあんのにね。
……なんで?

「ちょっ…なんだよ」
「誰だよあいつ」
「はぁ?」
「さっき来た奴。誰だよ」
「お前には関係ないだろ」
「ある」

あーちょっ痛い痛い、んな強く抱き締めんな馬鹿骨が折れる…!とか思いながらも抱き締められたまま。別に好きにさせているわけでも逃げないわけでもない、逃げられないんだこの馬鹿力。加減がないってか…このままだと肋骨あたりが逝きそうなので仕方なく口にする。

「ただの幼馴染みだ!分かったなら離せ、骨が折れる」
「…ああ、悪ぃ」

抱き締める力が弱まりほっと一息吐く。でも離してはくれないんだな。腰に回された手がすごく不愉快なんだが。だって俺男だぞ。

「ただの幼馴染み、何だよな?」
「そう言ってるだろ。大体それがお前になんの関係が、」
「大ありだろ。だって俺は」

お前のことが好きだからな。


………?
…えっ……と、…なに?…こいつ今なにほざきやがった?俺なにも聞こえなかった。つうか一ミリも、一ミクロも聞こえなかったんだけど何?もっかい言ってくれても、いいかな?

「誰が、誰を、好きだって?」
「俺がお前を」
「…正気か?」
「当たり前だろ。そもそも好きじゃねェ奴と寝たりしねェし」

だってお前男じゃんとかそれ以前に幽霊じゃないのかよとかその寝たのって本当に本当なのか俺記憶にないぞ、とか。言いたいことはこれまたたくさんあったが生憎脳味噌がショートしてうまく働かない。
だがこいつにはそんなこと関係なしで、ペンギンが何も関係ないと知った途端上機嫌になる。
意味が分からないと言うかついていける自信がないと言うか理解不能と言うか。少なくとも俺の理解の範疇は優に飛び越している。(ていうか幽霊ってだけでもう飛び越してるけど)

え、じゃあ何か?さっきのって…嫉妬か?

目眩がしそうだった。幽霊に嫉妬される奴なんて世界に俺一人ぐらいじゃないのか?それとも最近の幽霊は恋愛感情ってやつを持ってんのか?てかこいつもう幽霊でいいや。
この際いろんなことには目を瞑ろう。こいつがいなくなればそれでこの先暫く俺の人生は安泰だ。

「…ということで成仏?してくれ」
「いきなり言われても無理だな」
「前もって言や出来んのか」
「そう言う意味じゃねェよ」

じゃあどうすりゃいいんだやっぱ経か?経を唱えればいいのか?だから俺南無阿弥陀仏しか知らねぇって。

「あ……悪霊退散?」
「ぶっ殺すぞてめェ」
「止めろ、幽霊のお前が言うと洒落にならない」

思い付いたように口にすればユースタス屋は眉根を寄せた。額に浮き出た青筋を暢気に眺める。短気な奴だ。

そのあと何故か微妙な沈黙が流れてしまい、それにユースタス屋はため息を吐いた。そうしたいのはこっちの方だっての。

「つうことで俺ここにいるから」
「は?待て待て俺の意思はどこだ?」
「お前の意思何ざ最初から聞いてねェけど?」

さも当たり前といった風にいってのける。やっぱり理解の範疇は越えていた。
呆気に取られていたがすぐに睨み付ける。それで文句を言おうとすれば口を開く前に塞がれた。え?何でこいつどさくさに紛れてキスしてんの?何これ殴っていいの?

まあ幸いなことに唇は一瞬で離れたがにやりと笑った顔に俺はちょっと、本当にちょっとだけドキッとしてしまいました。そんな…俺男なのに……。





「ってんな訳あるかあああ!!!」
「うるせェよ馬鹿」


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