なんて無謀な恋をする人 | ナノ

『もしも』
「ペンギンか?大至急俺の家に来い!」


インターホンがなって扉を開けると急いで来たらしいペンギンを招き入れる。どうかしたのか?という問いは無視した。

「おい、ロー…」
「なあ、お前あれが見えるか?」

あれ、と言って椅子に座っているユースタス屋を指差せば奴の眉(ないけど)がぴくりと動く。(人間じゃないというならあれでいいだろ馬鹿。)
ペンギンは俺の指先とユースタス屋(がいる方向)と俺の顔をゆっくりと眺めた。

「あれ、って?」
「…見えないのか?」
「壁と椅子は認識出来るがな」

それがあれか?と尋ねられたので首を横に振る。それにユースタス屋はにやにや笑った。
え…マジで?

「マジで見えないのか?ペンギン。あそこでにやにやムカつく顔で笑ってる男が」
「誰がムカつく顔だてめェ」
「……いや、何もない、が?」
「本当にか?今あいつ喋ったぞ?」
「だから言っただろ、視えないって」
「…ああ、本当に壁と椅子しか俺には見えない」

戸惑ったような顔をしてペンギンは言った。俺はその顔を真っ青な顔で見ていた。
元々から不健康だ何だと言われてるぐらいだ。ペンギンは真っ青な俺の顔と(ペンギンから見れば)謎の言動に、疲れてるんじゃないのか?と控えめに聞いてきた。もう頷く気力もない。

「熱でもあるかもしれない」
「いや…ない」

ペンギンは俺の額に手を当てるが俺は至って健康だ。何せ自分の体は自分がよく知っている。ああでもこれが熱や疲れからくる幻覚だったらどんなにいいか。でももし幻覚だとしたらユースタス屋の声も認識出来たし体も触れたし何かいろいろやばい気がする。

「ローには…何か見えるのか?」
「まさか……ただの気のせいだ。お前にも確かめてほしくて…やっぱりなにもないよな?」
「ああ、何もない」

ペンギンには逐一幽霊のことを報告してるからきっとその類いだとはすぐに気付いただろう。もしかしたら俺が不安がっていると思ったのかもしれない。きっぱりと言い放った口調は安心させようとしている気がしたからだ。
だが俺の前で奴は存在し続けている。そして…何か不機嫌そうだな。

「悪かったな、急に呼び出して。…やっぱり疲れてるみたいだからちょっと寝てくる」
「そうしろ、顔色が少し悪いからな。一人で平気か?」
「当たり前だろ」

正確にはもう一人いるしな。とりあえずペンギンに心配されつつもこれ以上心配されないように平静を装って見送る。がちゃり、と閉まるドアを見てリビングへと戻った。

当たり前だがユースタス屋はそこにいた。
どうしようこいつ本当に幽霊かもしれない。


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