なんて無謀な恋をする人 | ナノ

俺は絶対認めない。幽霊なんて存在はこの世に絶対いない。…はず。


男の名はユースタス・キッドと言った。そして俺は目の前の男が、ユースタス屋が、幽霊だということが未だに信じられないでいる。

「だぁから何度も同じこと言わせんじゃねェよ」
「いやだってどう考えてもおかしいだろ!お前ちゃんと足あるじゃねーか!」
「見分ける基準はそこなのか」

ばんっ、とテーブルを叩くとユースタス屋は面倒くさそうにため息を吐いた。こんなどうみたって人間としか思えないような幽霊がいてたまるか。

「何度も言うが俺は幽霊でとっくに死んでんだよ」
「じゃあ証拠を見せろ」そう言うとユースタス屋は眉根を寄せた。何か考えるように目線を逸らす、それににやりと笑う。ほらやっぱりこいつが幽霊だなんて有り得ない。こいつは立派な(?)人間だ。
でもだとしたらユースタス屋は俺を騙してることになる。勝手に侵入して襲ってバレたら俺は幽霊だとか訳の分からないことを言って人間としての罪(不法侵入とか強姦とか)を免れようと…

「んな訳ねェだろ。だとしたらただの最低な野郎じゃねェか」
「はっ、どうだかな。証拠がない限りお前は言い逃れできな……人の心を勝手に読むな!」
「てめェが全部口に出して言ってただけだ」

呆れたような顔をしたのでそれにムッとして睨み付ける。ユースタス屋はやれやれと言いたげに肩を竦めた(すげぇムカつく。)が、すぐ何かに気づいたようにこちらを見つめた。

「ちょっとこっち来いよ」
「命令するな」
「いいから来いって」

証拠がいるんだろ、とユースタス屋が言ったので仕方なく隣へ移動する。これで俺の納得のいくものじゃなかったら絶対に認めない。というか納得のいくものでも絶対に認めたくない。

隣に行くとユースタス屋は俺の腕を引っ張ってあろうことか俺を抱き締めやがった。もちろん俺はこんなの求めていない。

「いきなりなにすんだよ!」
「分かんねェのか?」

ぐっと胸元に頭を押し付けられてユースタス屋を見れば首を傾げている。生憎だが何も分からない。

「もういいから、」
「心臓」
「……は?」
「だから心臓。動いてねェだろ?」

え、と思ったときには身体中から血の気が引いていくのが分かった。突き飛ばすように離れると手首を触る。顳も首筋も。脈拍はなかった。曲がりなりにも医者を目指してる訳で、脈が取れないなんてことは、ない。

「脈拍がないんですけど」
「知ってる」
「脈拍がないってことは心臓が動いてないってことだぞ?心臓が動いてないのにお前は…」
「ああ、生きてる人間とほぼ同等の動きをしてるな」

まあ俺は幽霊だからな、とけろりとした顔で言ってのける。おいおいマジかよ…。

「これで信じる気になったか?」
「っ…いや、幽霊なんているはずがない!」
「…ったく。じゃああれだ。俺はお前以外には視えない」
「嘘だろ」
「嘘じゃねェよ。霊感あるやつは別だけどな」

何なら試してみりゃいい、とユースタス屋はにやにや笑う。どうしてもこいつは幽霊じゃないという確証がほしい俺は、ユースタス屋の言葉通り試してみることにした。


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