なんて無謀な恋をする人 | ナノ

「…とりあえず出てってくんない?」
「無理。だってここ俺の家だし」



最低でも三十分ぐらいは茫然自失状態だったと思う。脳味噌がきちんと働くまでベッドの上で項垂れていた。最早取り返しのつかないであろう俺のバックバージンを嘆いて。
その間隣のどこの馬の骨とも分からねぇこいつは自分の体をあちこち確かめるように触り、これまた俺の頭や髪を確かめるように撫でたり触ってきたりした。正直行動の意味はよく分からない。(でも関わりたくないので放っておいた。)

暫くして何とか自分を取り戻した俺は服を着るとこいつのものであろう服を顔面向かって投げ付ける。何か言うのも聞かず寝室から逃げるようにリビングへ。もういい考えるのは止めにしよう。あいつのことは忘れよう早く出ていってもらおう、と。そんな意味も込めて服を投げ付け寝室から出たのに。何故かこいつはさも当たり前のように俺の目の前に座った。

「なんでいんの?」
「ここが俺の家だから」
「いやいやいや…俺の家だし」
「まあ今はてめェのだけどよ。元に住んでたのは俺だ」

へぇ…で?としか言いようのない気が。つか何だこいつ。ここが家だったってお前ホームレスか何かかよ。見た目俺と同い年くらいなのに大変な…待てよ。ってことは俺は…ホームレス野郎と寝たのか…?

「お前…家ないのか?」
「ここをカウントしねェならねェな」
「ってことはホームレス…?」
「何か違う気もするけど…まあそうかもな」

どうしたんだ俺。一体何が起こったんだ俺。今までそれなりに清く正しく健全に生きてた俺はどこいった。顔も名前も知らねぇ野郎でしかもホームレスと関係を持つってどういうことだよ俺…泣きたい。

「さっきから百面相すげェな」
「うるせぇ誰のせいだと思ってやがる!」

きっと顔を上げて睨み付けると奴はにやにや笑う。何か苛々してきた。俺は一つも悪くねぇのに何でこんな悩まなきゃいけねぇんだ。

とりあえず出てってもらおうそうしようと立ち上がろうとしたが、奴の伸びてきた手がゆるりと頬を撫でて何故かそれにまた体が固まって駄目になる。

「やっぱ視えてるって断然いいな」
「…は?」
「視えなかっときは俺が何しても結構放っておいたじゃねェか」

上に乗っかったとき最初はそりゃビビって泣きそうになってたくせに今日何か前に比べりゃ全然平気な顔するしよ。

すぐ慣れちまってつまんねェ、と男は言った。寝起きと違って活性化してる脳味噌ではすぐに会話のズレを見つけ出す。
そして俺は奴が言う行動と当てはまる行動をする奴を一人知っていた。

「お前…“なに”?」
「さあな。…強いていやぁ…」

ただの“幽霊”だろ。

そう笑った男にくらり、と目眩に近いものを覚えた。- ナノ -


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