「お前髪の毛ぐらいちゃんと拭いてこいよ」
「えーめんどい。ユースタス屋やって」
「…ったく」
風呂上がり、ぽたぽた落ちる水滴もそのままにソファの下に座ればユースタス屋に避難される。全く俺に甘いユースタス屋は俺がタオルを差し出すと文句を言いながらも髪の毛を拭いてくれた。
「放っておくと風邪引くぞ」
「別にあとでドライヤーかけるんだしよくね?」
そう言うとユースタス屋のやや呆れたような視線。だって事実じゃん。今まで面倒だから髪なんて拭いたことないけど、でもユースタス屋がやってくれるならそれもいいかなとか思ったり。
「そういやユースタス屋って俺がシャワー浴びてるときに入ってきたことあったよな。エッチ」
「あ?だってそりゃお前が一人で後処理するっつったのにやっぱ出来ないとか泣きついてき」
「ばっ…それ違ぇよ!つかそんなのは忘れろ!」
「無理。可愛かった」
自ずと赤くなる頬を無視してユースタス屋を睨み付ければにやりと返される。最悪だ。あんときは俺もユースタス屋も前後不覚に酔い潰れてたからてっきり忘れてると思ってたのに…。って、んなのはマジでどうでもいい。
「違くて、俺がシャワー浴びてるときにシャワー止めただろって話!」
「…そんなことしたか?」
「だって俺、それでユースタス屋の存在に気付いたし」
「……?んなことしてねェよ」
意味が分からないというように首を傾げたユースタス屋に眉根を寄せる。俺が幽霊の存在を認識したのはそれがきっかけな訳だからそれがユースタス屋の仕業でないはずがない。なのにユースタス屋は違うと言う。でもあんなの絶対気のせい何かじゃない。そう思っていると不意にユースタス屋が、ああ、と何か納得したように声を出した。
「それってきっとあれだろ。この部屋で死んだっていう女の仕業なんじゃね?」
「…は?」
ちょっと待て何だその新情報は。
「お前だって訳有りって知ってて住んでたんだろ」
「いや…いやいやいや。だってそれはユースタス屋が死んじまったからっていう訳有りじゃ」
「この部屋で死んだ訳でもねェし、んな訳ねェだろ。そもそも生きてるし。むしろその女のせいで事故って死に目にあったって考える方が一般的なんじゃね?だから未だ訳有りで安いんだろ」
お前も怪我したら完璧ここに住んだ奴は呪われるとかいわくつけられんだろうな、と暢気に言ったユースタス屋に背筋が寒くなる。何それ今物凄く部屋変えたい。
「ユースタス屋、俺、」
「あとその女いまお前が座ってる場所で死んでたらしい」
「!!!」
事も無げに言ったユースタス屋が俺の座っている場所を指差す。それにふらりと目眩がした。
「ごめんユースタス屋俺お前と一緒に暮らしてける自信ない」
「何だよいきなり」