なんて無謀な恋をする人 | ナノ

悪いけど人違いだよ。



その言葉が恐くて耳を塞ぎたかった。




「…ユースタス屋?」

吐き出されたそれは自分が思っていたよりも存外震えていて、ああ俺いまひどい顔してるんだろうな、なんて他人事のように思った。
服を握り締めたその手も震えていて本当に間抜けだ。


でも、確かめたいから。


それは多分一瞬の出来事だったんだろうけど、俺にはまるで永遠のように感じた。
というよくあるパターンのやつで。でも実際そうなのだから仕方ない。



振り向いた赤が、その手が、俺の頬に触れて、笑う。
たった一瞬の出来事。


「久しぶりだな、トラファルガー」



ああ、俺いまきっと、ひどい顔してる。


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