なんて無謀な恋をする人 | ナノ

おやすみ、と言って何でもなく眠った次の日、起きたらユースタス屋は隣にいなかった。




寝起きの頭は相変わらずうまく働かなくて、いつもなら隣にいるユースタス屋がいなくても、思うことは今日俺より早起きじゃんとかそんな感じ。一つ欠伸をして起き上がるとリビングにいるんだろうなと思って向かったが予想に反してユースタス屋はいなかった。
いつもならどこ行ったんだろうかと思うだけで放っておくが何だか今日は違う。

きっとユースタス屋はこの家のどこにもいなくて、俺の目の前に現れることも二度とないんだと、直感的にそう思った。

案外その思いは俺の中にストンと入り込んできてあっさりと認めさせるようなものだった。だって俺はユースタス屋がいなくなることを意識的に考えないようにしていたから。(だから逆に言えば俺はいつか起こるだろうその現実をずっと意識していた訳で。)

でもまさかそれがこんなに唐突で呆気ないものだとは思わなかった。呆気なさ過ぎて笑える。
じゃあ俺逝くからとか言われていきなり目の前で消え出すのもあれだけどさ、なんて。



「………っ」

ユースタス屋が、いや、バカスタス屋が天国にいったか地獄にいったかなんて知らないがその先でもう十回は死ねばいいと思う。何回でも死んで死んで死んで早く俺に会いに来ればいいんだ。たとえ姿形が変わっていてもユースタス屋なら見分けられる自信があるから、


「…っ、ふ…ぅ…」


だからその時は好きって言ってキスしたい。俺がいままで言えなかったこと全部言いたい。それでユースタス屋にからかわれてもお前本当に俺のこと好きなんだなとか言われても絶対素直に頷いてやる。そういうのに弱いユースタス屋はきっと照れて急にぶっきらぼうになるだろうからそしたらその赤い顔を見て笑ってやるんだ。ざまぁみやがれって。



『……離れたくねェな』

本当はあの夜ユースタス屋が言ってたことちゃんと聞こえてた。
俺の頭を優しく撫でながら言ったその言葉に泣きそうなったのだって覚えてる。あのとき素直に俺も離れたくないと言えたらどんなによかったか。素直に、



(結局ユースタス屋にちゃんと好きだって言ったこと、ない。)



最後までユースタス屋に甘えてしまった。いまさら後悔したってもう遅いのに。
馬鹿だ、俺。


「っ、ぅ…ふっ…ユースタ、屋…」


相変わらず俺の意思に反して流れる涙は止まることを知らなかった。ゴシゴシ乱暴に拭っても止まらない。いつもならそんな俺の手を掴んで止めさせて優しくキスしてくれるはずのユースタス屋はいない。俺の知っているユースタス屋はもうどこにもいないのに、どこかその優しい手が、声が、キスが、この涙を止めてくれるのを期待せずにはいられなかった。


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