「ん…んぅ?」
ぼんやりしたまま顔を上げると目の前にユースタス屋のドアップがきて唇を塞がれた。開いた隙間から入り込んでくる舌に、何で今?と思ったけど正直眠気の方が勝っていたのでユースタス屋の好きにさせておいた。
「ふっ、ん…ん、ぁ…」
でもやっぱりそう上手くはいかないらしい。いくら眠気が勝っているからってこんな状態じゃ眠りに集中することは出来ない。滑り込んできた舌が上顎をなぞり、口腔を擽られるようにして舌を這わせられると当たり前だがそれどころじゃなくなった。
「んぁ…はっ、は…」
散々舐め尽くされたあと、ちゅっと軽く音を立てて唇を離された。前から思ってたけどやっぱりユースタス屋はキスが上手だ。ユースタス屋にキスされるとボーッとなって何だかどうでもよくなってしまう。
「トラファルガー…」
どこか熱のこもった声で名前を呼ばれてびくりと肩が跳ねる。もしかして、その、するのだろうか、と上手く回らない頭でユースタス屋をそっと見上げれば目尻にキスされた。
…でもこんなの今更だ。だって俺とユースタス屋は一回シてるんだし。(記憶ないけど。)
「…ユースタス屋」
「ん?」
「その、ユースタス屋は覚えてるかもだけど、俺覚えてない、から…だから」
俯いて口ごもるよう話す俺の顔はきっと真っ赤だ。自分で言っといて何言ってんだろう俺という気持ちになって余計に恥ずかしい。
だからそのあとは上手く言葉が出なくて落ちつか無げに視線をさ迷わすとユースタス屋は首を傾げた。それでも黙っていると、ああ、とどこか納得したような声が響いて、今度はユースタス屋が笑っていた。
「もしかして一番最初に会った日のことか?」
恥ずかしくてユースタス屋の顔は見れなくて(というかいつの間に俺はこんな乙女になったんだろう)うつむいたまま小さく頷くと、予想に反して聞こえたのはユースタス屋の笑い声だった。
「安心しろよ。俺はまだお前に手ェ出してねェから」
「…は?じゃああの日は、」
「あれは何か面白そうだから脱がしただけだ」
いくら俺でも寝込みは襲わない、と言ったユースタス屋に思考回路がついていけない。…つか『何か面白そうだから』で俺の純情はずっと弄ばれてたのか?
「……トラファルガー?」
「触らないでください」
「何で敬語なんだよ」
「自分で考えてください」
「…怒ってんのか?」
「ったりめーだ馬鹿野郎。バカスタス」
もう知らねぇ、とユースタス屋の腕の中から出ようとすれば、ぎゅっと握りしめられて出来なくなる。ムッと眉根を寄せてユースタス屋を見れば宥めるように額にキスされて。でもこんなんじゃ騙されない。
「からかって悪かったって」
こんなんじゃ…。
「なぁ、機嫌直せよ」
ああもう…!
何がムカつくってそんなんでコロッとまあいいかなと思ってしまう自分だ。現にユースタス屋の甘ったるい声と頬を撫でる手に思考は八割方もっていかれていた。
でもすぐに許すのはやっぱりムカつくから暫く怒ったフリしてよう。